高嶺の花も恋をしたい!
「花緒には花緒の思い描いた人生がある。俺はそれを一番に応援してやりたかった。まだまだ結婚なんてしたくないだろうし……そう思ったら家のことも言い出しにくくなって……でも言うべきだった。周りからよくわからない情報を断片的に聞かされたら、気分悪いよな。すまない」
「うっ……ヒック……太一くんのバカ……すごく嫌だったんだから……」
「悪かった」
「私、しばらく……実家で暮らすわ。ちょっと考えたいの……」
「ダメだ。行かせない!」

 無理やり抱きしめた俺の腕の中から、花緒が抜け出す。

「……今晩だけ。今晩だけでも離れたい。一人で考えたいの。気持ちを整理したいの」
「花緒……なら俺が出ていく」
「それはだめ。ここは太一くんの家なのに」
「花緒が出て行くのは絶対にダメだ。ここにいてくれ。……今晩だけなんだろう?」
「……」

 花緒を実家に行かせてしまったら、もう帰ってこない気がする。それだけはだめだ。
 
「俺が実家に帰る。ちょうどじいさんの様子を見ておこうと思っていたところだし」
「あ……うん、そうだね……」

 花緒がハッとして、心底心配げな顔をしている。

 実際のところ、じいさんとはメッセージアプリでいつもやり取りしていた。

 だがメッセージでは元気そうにしているが、しばらく会っていないから、それが表面上のことなのか、本当に元気なのかわからなかった。

 今後のことを考えるためにも、どうせなら早いうちに会いに行った方がいい。

 今日のことで母親にはかなり叱られそうだが……。

 今にも出ていきそうだった花緒が、また出ていくと言い出さないうちに俺は家を出ることにした。

 不本意だが、何もかも後手後手にしてしまった俺が悪い。


◇ ◇ ◇
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