高嶺の花も恋をしたい!
「ただいま」
「太一! お前やっと帰ってきたのか」
「じいちゃんまだ寝てなかったんだ」
「久ちゃんが心配するから部屋に入っただけだ」
「そっか……」


 実家に帰ったのは、夜の10時過ぎだった。
 祖父はすでに寝室にいると聞いたが、ダメもとで部屋を訪ねてみたのだ。

「会っても驚いた顔しないでね。お義父さんすごく痩せたから……」と母から聞いてはいたが、実際会ってみると、祖父の変容に驚きを隠せなかった。

 祖父は元々高身長で恰幅がよく、現場では棟梁として圧倒的な存在感を放っていた。

 小さい時の俺にとって祖父は、何があってもビクともしない岩のような人だと思っていた。

 ところが今目の前にいる人は、頬がこけて顔が一回り小さくなって柳の枝のように痩せている。以前の面影が全く残っていなかった。

 母からあらかじめ聞いていなかったら、俺は直視できなかっただろう。

 実家に帰るまで知らされていなかったが、一週間前まで入院していたそうだ。

 祖父が「太一には言うな」と両親に厳命したため、俺には伝えられていなかったのだ。
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