高嶺の花も恋をしたい!
「ほら、合宿で人気ナンバーワンだって言ってたでしょ? 入社式で宣誓した本社第一設計部の高野君」
「あ、うん、た、高野君ね……」
「入社一年目で、和歌山のニュータウンを任されたんだってさ。もちろんチームの一人としてだけど、あのプロジェクトに入りたかった中堅がごろごろいるのよー。すごくない?」
「……」

 知らなかった。私、何も聞いてない……。

「そ・れ・に、女もよ」
「女……?」
「モテすぎて、告白された数がもうすぐ三桁に届くとか」

 三桁!? そんなにモテるんだ……。

 告白されている高野を想像すると、胸がざわざわとした。
 
「あ、ちなみに若田くんも和歌山のプロジェクトに選ばれたの。でさ、若田君って顔が広いからさぁ……今度の同期会には絶対に高野君を呼んでくれって、女子に言われているみたい」
「そう……」
「あっちのミッションもたいへんだ~……けど本当に高野くんが……来たら……支店からも……女子が集まりそう……」

 ほとんど寝落ちしそうな桃子を見ながら、私は最近の高野のことを考えていた。

 いつも平日は帰りが遅くて、帰宅すると私が作り置きしておいた晩ご飯をかき込むように食べて一瞬で寝てしまう。

 そんな中でも朝のジム通いは欠かさないし、休日は私の実技特訓を見てくれている。それはそれは真剣に……。

 だから会社での出来事をゆっくり話すこともなかったのだ。

 私が試験に必死で余裕がなく、同居人に無関心過ぎたのか。一緒に住んでいるというのに、知らないことばかりで高野がとても遠い存在に思える。

 改めて同居人という名の他人なのだと思うと寂しく思えた。
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