薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
返事がない。

そこでようやく、事務所が異様なくらい静かなことに気づいた。

「……何ですか?」

純さんがゆっくり瞬きをした。

「いや……すごい勢いだったから」

愛梨さんも笑いを堪えながら頷く。

「途中から入る隙がありませんでした」

「え?」

暢さんが口元を押さえる。

「神宮寺さん、途中ちゃんと息してた?」

「してました!」

張りつめていた空気が少しだけ緩んだ。

その中で、茂樹先生がゆっくり頷く。

「おかしくありませんよ。何を知りたいと望むのかも、ご自分のお金を何に使うのかも、神宮寺さんが決めていいことです」

そして表情を引き締めた。

「では、正式に進めましょう」

「はい」

そこで暢さんが、今さらのように手を上げた。

「……で、ちょっといい?」

「はい?」

「さっきから気になってたんだけど、十二億円って何?」

「……え?」

そうだった。

暢さんには言っていない。

「何でそんな大金の話が、途中から普通に混ざってるの?」

「あ」

暢さんが周囲を見る。

「みんな知ってるの?」

何人かが普通に頷く。

「何で僕だけ知らないの?」

聖子さんが呆れたように返した。

「暢、昨日いなかったでしょう」

「いや、それはそうだけど。十二億だよ?」

鈴子さんが首を傾げる。

「奏さんのお金でしょう?」

「姉さん、そういう問題じゃないから」

純さんが吹き出した。

「今そこ?」

「そこだよ。ずっと気になってたけど、神宮寺さんがすごい勢いで話してるから止められなかったんだよ」

「……そんなに勢いありました?」

「かなり」

愛梨さんまで頷く。

「はい」

「……恥ずかしい」

さっきまでの重い空気が、ようやく少しだけ和らいだ。

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