薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「アパートに戻った時、最初は何も変わってないと思いました」

「何も?」

征さんが聞き返す。

「はい。家具もテレビも冷蔵庫も、服も全部そのまま。部屋が荒らされていたわけでもありません」

だから一瞬、本当にいつもの部屋だと思った。

けれど引き出しを開けて、そこにあるはずのものがないことに気づいた。

別の場所も確認した。

やっぱり、ない。

「現金、通帳、印鑑、時計、アクセサリー……換金できそうな金品類だけ、全部なくなっていました」

その瞬間、征さんの空気が変わった。

さっきまで話を聞いてくれていた人ではない。

司法書士として、何かを確認する目になっている。

「金品だけですか?」

「はい」

「室内に荒らされた形跡は?」

「ありません」

「玄関や窓に、こじ開けられたような痕跡は?」

「少なくとも、私には分かりませんでした」

「合鍵を持っていた人物は?」

そこだけは、今でもはっきり答えられる。

「篤郎です」

茂樹先生と征さんが、ほんの一瞬だけ目を合わせた。

その視線だけで、何かが違うと感じた。

「警察には?」

「一応、相談はしました」

「被害届は?」

私はゆっくりと首を横に振った。

「そこまでちゃんとはしていません」

「どうして?」

責めるような言い方ではない。

ただの確認。

それでも、少しだけ苦く笑った。

「もう……どうでもよかったんです」

仕事を失い、恋人はまた未來と関係を持っていて、戻った部屋からはお金までなくなっていた。

両親はもういない。

頼れる家族もなく、何を信じればいいのかさえ分からなかった。

「誰が取ったのか証拠もない。篤郎は合鍵を持ってたけど、だからって篤郎だと決めつけられないし……何より、もう何かする気力がなかったんです」

怒ることにも、泣くことにも、戦うことにも体力が必要だ。

あの頃の私には、それすら残っていなかった。

「それから一年近く、バイトをしながら暮らしてました」

「未來さんとは?」

「ほとんど連絡を取らなくなりました」

問い詰めたわけではない。

何をしたのかと聞いたわけでもない。

ただ距離を置いた。

逃げたと言われれば、その通りだと思う。

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