薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
ひとしきり笑ったあと、玲奈さんが不意に私の方へ身体を向けた。

嫌な予感がする。

さっきから、この人がこういう顔をする時は大体ろくなことがない。

「奏ちゃん」

「……はい」

「私、実はあなたに会ってみたかったんだよね」

「私に?」

「うん」

玲奈さんは頬杖をつきながら、ちらりと陸斗さんを見る。

「だって、陸斗があそこまでなる相手って、どんな子なんだろうと思うじゃない」

「あそこまでって何ですか?」

「玲奈」

間髪入れず陸斗さんの声が飛ぶ。

「あら。何?」

「余計なこと言わなくていいです」

「まだ何も言ってないでしょう」

「これから言うでしょう」

「長い付き合いって嫌ねぇ。すぐバレる」

玲奈さんは楽しそうだけど、私は笑えない。

「あの、ものすごく気になるんですけど」

「奏、気にしなくていいです」

「陸斗さんに聞いてません」

「……」

「玲奈さん、何なんですか?」

「それは本人から聞いて」

「何でですか!」

「その方が面白いから」

またそれ。

この人たち、本当に私で遊んでない?

そう思った次の瞬間、玲奈さんがごく自然に私の肩へ腕を回した。

「え?」

近い。

また近い。

というより、さっきより近い。

「玲奈」

陸斗さんの声が一段低くなる。

「何よ」

「離れてください」

「何で?」

「近いです」

「女同士じゃない」

「関係ないでしょう」

「何? 妬いてるの?」

玲奈さんが楽しそうに聞く。

すると陸斗さんは、一瞬も迷わなかった。

「そうですけど」

「…………」

え?

そこ。

認めるんですか?

私は固まった。

玲奈さんまで一瞬だけ目を丸くしたあと、次の瞬間には声を上げて笑い始めた。

「陸斗、あんた変わったねぇ!」

「何がですか」

「昔なら絶対そんなこと言わなかったじゃない」

「今は言います」

「へえ……」

玲奈さんが私を見る。

その顔。

絶対に何か面白いものを見つけた人の顔だ。

「なるほど。これは思ってたより重症だな」

「玲奈」

「はいはい」

何の話をしているのか分からない。

いや。

何となく分かるような気もするけれど。

分かりたくない。

「奏ちゃん」

「はい?」

「今度、二人でご飯行こう」

「え?」

「陸斗の昔話、いっぱい教えてあげる」

「行かなくていいです」

即答だった。

「だから、何であんたが決めるのよ」

「玲奈に何を吹き込まれるか分からないでしょう」

「事実しか言わないわよ」

「それが一番危険なんです」

「何なんですか、陸斗さんの昔って!」

気になる。

ものすごく気になる。

玲奈さんは私の肩を抱いたまま、楽しそうに笑っている。

一方の陸斗さんは、明らかに不機嫌そうだ。

そして私は、その二人に挟まれながらふと思った。

幼馴染同士の距離感も。

この事務所の人間関係も。

陸斗さんの“普通”も。

今日初めて会ったばかりなのに、すでに友達のように私の肩を抱いている玲奈さんも。

やっぱり。

全部おかしい。

私はそっと玲奈さんとの距離を確認しながら、心の中で真剣に問いかけた。

――待って。

この距離感、本当に普通ですか?
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