薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
第三話 ――過去に埋もれた違和感――
「では、改めまして」
澤登陸斗さんは私の正面へ腰を下ろすと、手元にメモとペンを置いた。
その動作ひとつ取っても無駄がない。
さっきまで茂樹先生や聖子さんたちと、相談なのか雑談なのか分からないような話をしていた空気が、この人が座っただけで一気に変わった。
「先ほどまで座談会のように話されていた内容を、もう一度伺います」
「……座談会」
後ろで誰かが吹き出した。
でも本人は、気にした様子もない。
「一つずつ確認します。氏名、現在の年齢、性別。それから、名前は漢字も正確に教えてください」
「漢字も?」
「はい。分かる範囲で結構です」
淡々。
本当に、淡々としている。
「愛梨さん」
「はい」
「ここからタイマーを掛けてください。一時間です」
「承知しました」
愛梨さんがスマートフォンを操作すると、画面に表示された数字が一秒ずつ減り始めた。
……タイマー掛けるんだ。
しかも、本当に一時間。
「ほら。タイマーまで掛けるの、陸斗くらいよね」
少し離れたところから純さんの声が飛んでくる。
「ケチくさい」
「純さん」
陸斗さんは私を見たまま言った。
「聞こえていますよ」
「聞こえるように言ったの」
強い。
この事務所、誰もこの人を怖がらないらしい。
「まあまあ」
茂樹先生が立ち上がった。
「皆さん、それぞれの仕事に戻りましょう。ここからは陸斗に任せます」
そう言った直後。
「あ、聖子さん。僕にもコーヒー淹れてくれます?」
「はいはい。ミルクと砂糖多めですね」
「お願いします」
すると。
「父さん」
陸斗さんが言った。
振り向きもしない。
「砂糖は一個までにしてください」
「え?」
「この前も二個入れていたでしょう」
「二個くらいいいじゃないか」
「よくありません」
「一個と二個で、そんなに変わるかなぁ」
「変わります」
「……はいはい。茂樹さん、今日は一個ね」
聖子さんが笑う。
「聖子さんまで……」
私は思わず陸斗さんを見た。
機械みたいに話す人だと思っていたけれど、周りでこれだけ好き放題言われているのに、全部きちんと聞こえているらしい。
しかも父親のコーヒーに入る砂糖の数まで把握しているのに、一度も振り向かない。
……凄いな、この人。
ここまで割り切れるんだ。
「神宮寺さん」
「はいっ」
「始めます」
「あ、はい」
切り替えも早い。
澤登陸斗さんは私の正面へ腰を下ろすと、手元にメモとペンを置いた。
その動作ひとつ取っても無駄がない。
さっきまで茂樹先生や聖子さんたちと、相談なのか雑談なのか分からないような話をしていた空気が、この人が座っただけで一気に変わった。
「先ほどまで座談会のように話されていた内容を、もう一度伺います」
「……座談会」
後ろで誰かが吹き出した。
でも本人は、気にした様子もない。
「一つずつ確認します。氏名、現在の年齢、性別。それから、名前は漢字も正確に教えてください」
「漢字も?」
「はい。分かる範囲で結構です」
淡々。
本当に、淡々としている。
「愛梨さん」
「はい」
「ここからタイマーを掛けてください。一時間です」
「承知しました」
愛梨さんがスマートフォンを操作すると、画面に表示された数字が一秒ずつ減り始めた。
……タイマー掛けるんだ。
しかも、本当に一時間。
「ほら。タイマーまで掛けるの、陸斗くらいよね」
少し離れたところから純さんの声が飛んでくる。
「ケチくさい」
「純さん」
陸斗さんは私を見たまま言った。
「聞こえていますよ」
「聞こえるように言ったの」
強い。
この事務所、誰もこの人を怖がらないらしい。
「まあまあ」
茂樹先生が立ち上がった。
「皆さん、それぞれの仕事に戻りましょう。ここからは陸斗に任せます」
そう言った直後。
「あ、聖子さん。僕にもコーヒー淹れてくれます?」
「はいはい。ミルクと砂糖多めですね」
「お願いします」
すると。
「父さん」
陸斗さんが言った。
振り向きもしない。
「砂糖は一個までにしてください」
「え?」
「この前も二個入れていたでしょう」
「二個くらいいいじゃないか」
「よくありません」
「一個と二個で、そんなに変わるかなぁ」
「変わります」
「……はいはい。茂樹さん、今日は一個ね」
聖子さんが笑う。
「聖子さんまで……」
私は思わず陸斗さんを見た。
機械みたいに話す人だと思っていたけれど、周りでこれだけ好き放題言われているのに、全部きちんと聞こえているらしい。
しかも父親のコーヒーに入る砂糖の数まで把握しているのに、一度も振り向かない。
……凄いな、この人。
ここまで割り切れるんだ。
「神宮寺さん」
「はいっ」
「始めます」
「あ、はい」
切り替えも早い。