薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
耕史が帰ったあと。

澤登法律事務所は、その日の新規受付を終了することになった。

純さんと愛梨さんが残っていた連絡を片づけ、聖子さんが記録を保存する。

しばらくして、陸斗さん、純さん、愛梨さん、聖子さんが三階へ上がってきた。

扉が開いた瞬間。

私は真っ先に陸斗さんを見る。

妻。

あとで絶対聞きますからね。

そんな私の視線に気づいたのか、陸斗さんもこちらを見た。

そして。

すっと目を逸らした。

……今。

逸らしましたよね?

「お疲れ」

大雅さんが声を掛ける。

純さんが大きく息を吐いた。

「いやぁ……疲れた」

「ほぼ何も知らなかったですからね」

愛梨さんも苦笑する。

聖子さんは記録を確認しながら、

「でも、思っていた以上に喋ってくれましたね」

と冷静だった。

「で」

耀さんが椅子を回し、陸斗さんを見る。

「妻って何?」

来た。

「そうですよ。私も聞きたいです」

「何ですか」

「何ですか、じゃないです!」

問い詰めようとした、その時だった。

階下から人の気配がして、続いて三階の扉が開いた。

「ただいま」

入ってきたのは茂樹先生だった。

「あ、父さん」

「お帰りなさい」

陸斗さんが声を掛ける。

でも、すぐに違和感を覚えた。

茂樹先生の表情が、いつもと違う。

この人数を見れば、普段なら何か一言くらい冗談を言いそうなのに。

今日は妙に神妙な顔をしたまま鞄を置き、室内を見回した。

何かを言いかけ――。

ふと。

陸斗さんを見る。

「……その前に」

「何?」

「何だい、妻って」

「…………」

一瞬。

部屋が止まった。

耀さんが先に吹き出した。

「そこ拾う!?」

「拾うだろ」

大雅さんまで笑う。

私は改めて陸斗さんを睨んだ。

「そうですよ。いつから私、妻になったんですか」

「咄嗟です」

「咄嗟で妻にしないでください!」

笑いが漏れる。

茂樹先生まで少し楽しそうに息子を見る。

「なるほど。咄嗟に“妻”が出るくらいには、そういう認識なんだね」

「父さん。話があるんじゃなかったの?」

「あるよ」

「だったらそっちを」

「でも妻の方が気になった」

この親子。

こういうところだけ、本当によく似ている。

「まあ、それはあとで」

「あとでやるんですか!?」

誰かが笑った。

茂樹先生は小さく咳払いし、今度こそ表情を戻した。

「坂上幹司についてだよ」

その名前で、部屋の空気が一気に変わった。

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