薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
未來が顔を上げる。

完全な暗闇ではない。

窓から差し込む光が、テーブルや人の輪郭だけを薄く浮かび上がらせている。

さっきまで聞こえていた食器の音。

周囲の話し声。

それが、ふっと消えた。

そして。

客たちが動き始める。

慌てるでも、騒ぐでもない。

静かに席を立ち、次々とレストランから出ていく。

「……何?」

未來が周囲を見る。

坂上先生も。

そこで初めて、明らかに表情を変えた。

私は知っている。

役目を終えた人たちが予定通り移動しただけ。

でも。

未來と坂上先生は知らない。

やがて、一般客に見えていた人たちがいなくなる。

それでも、席を立たずに残る人たちがいた。

もう誰も会話をしていない。

誰も食事を続けていない。

静かに、そこにいる。

「……未來」

坂上先生が低く名前を呼んだ。

未來もようやく気づいたらしい。

顔から余裕が消えていく。

そして。

正面の壁がゆっくり明るくなった。

大型スクリーンに映し出された最初の一枚。

――私の両親。

胸の奥が一度だけ強く鳴る。

写真の下には、会社名。

日付。

事故の日。

そして、一本の線。

投資話。

会社内部への接触。

資金の動き。

坂梨未來。

坂上幹司。

アークグローバルソリューション。

画面は止まらない。

複数の会社を経由した資金。

代表者変更。

事業移転。

事故当日の記録。

馬淵信治郎。

私の両親の会社。

財産。

そして最後に、坂梨未來へ集まっていく線。

未來も。

坂上先生も。

何も言わない。

その時。

私の後ろから聞き慣れた声がした。

「では、改めまして」

振り返らなくても分かった。

陸斗さん。

急ぐ様子もなく、こちらへ歩いてくる。

未來の目が、その姿を見た瞬間、大きく見開かれた。

「……あなた」

陸斗さんは私の隣まで来ると、ほんの少し口元を緩めた。

「どうも。奏を騙した男の澤登陸斗です」

「…………」

今。

そこ拾うんですか。

こんな状況なのに。

「今から、お二人に確認したいことがあります」

声は穏やかだった。

「まずは、座ってお話ししましょうか」

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