薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
坂上先生は周囲を見回した。

入口。

窓際。

奥。

残っている人々。

「……随分と大掛かりですね」

「そうですね」

陸斗さんはあっさり答えた。

「大掛かりにせざるを得ない程度には、お二人が色々なところへ手を広げていらっしゃったので」

坂上先生の眉が僅かに動く。

未來も椅子へ座り直した。

一拍遅れて、坂上先生も。



「まず、ここから確認しましょう」

陸斗さんが言った。

「坂梨未來さん。あなたは事故より前から、神宮寺さんのご両親と面識がありましたね」

「……昔のことだから、よく覚えてない」

「では、ご両親へ投資の話を持ちかけたことも?」

「知らない」

「分かりました」

あっさり引いた陸斗さんに、未來の方が戸惑う。

でも、終わるわけがない。

「その点については、別の資料もあります」

レストランの奥から、茂樹先生が歩いてきた。

「久しぶりですね、坂上さん」

坂上先生の顔が変わる。

「……澤登茂樹」

「覚えていていただけて光栄です」

茂樹先生は柔らかく笑い、スクリーンを見る。

「私は会社と資産の流れについて確認したい」

何社も挟み。

代表者を変え。

事業を移し。

負債処理に見せ。

元の形が分からないほど枝分かれさせた資産。

でも、画面上では何本もの線が最後に一つへ集まる。

――坂梨未來。

「随分複雑にしましたね」

茂樹先生の声は穏やかだった。

「神宮寺さんのご両親の財産は、会社の負債に使われたことになっていました。しかし、実際の資金移動とは一致していない」

「……私の知らないところでやったことでしょ」

未來が言う。

「知らなかったと?」

「そうよ」

「なるほど」

茂樹先生が頷く。

「それなら、こちらも」

ヒールの音が響く。

「私は、知らなかったでは済まないと思うけどね」

玲奈さん。

腕には分厚いファイル。

目が。

怖い。

ものすごく怖い。

「九条玲奈……」

「ご存じで良かったわ」

テーブルへ資料を置く。

「私は神宮寺家の件だけじゃなく、別の企業案件からあなたの会社を追っていたの」

スクリーンへ別の企業名が並ぶ。

「企業間の契約、役員変更、資金移動、関係者の接触記録。複数案件で、よく似た流れが出ている」

「証拠は?」

坂上先生が言う。

玲奈さんの眉が動いた。

「材料があるから、ここで話してるのよ」

「推測だけなら――」

「推測?」

声が低くなる。

「私が推測だけでここまで来ると思ってる?」

怖い。

「あなた、本当に杜撰なのよ。複雑にしたつもりでしょうけど、痕跡を残し過ぎ」

出た。

玲奈さん。

完全に怒ってる。

坂上先生の表情が少しずつ固くなっていく。

その間にも、スクリーンは進んだ。

会社。

資金。

名義。

そして事故。

「では」

別の声。

「次は僕から」

暢さんだった。

タブレットを手に現れる。

「坂梨未來さん。事故当日、運転していたのはあなたですね」

「知らない」

「そうですか」

暢さんも、そこで争わない。

映像が切り替わる。

事故当日の移動。

車両。

時刻。

関係者の記録。

その後に出頭した馬淵信治郎。

馬淵と未來の関係。

さらに。

五歳の子ども。

「馬淵さんは、この子を自分の子だと思っていた可能性がある」

坂上先生の顔が変わった。

未來の唇も僅かに動く。

そして。

鑑定記録。

父。

坂上幹司。

母。

坂梨未來。

二人の間に、初めてはっきりとした亀裂が走った。

「これ……」

未來が声を失う。

「どこで」

坂上先生の声が低くなる。

暢さんは表情を変えなかった。

「今、重要なのは内容でしょう」

静かな足音。

今度は鈴子さんだった。

「お二人とも」

その声で、未來も坂上先生もそちらを見る。

「随分と長いこと、人を利用してきたようですね」

未來が目を細める。

「……誰なの、あなた」

「澤登鈴子です」

それだけだった。

でも、坂上先生は知っていたらしい。

顔色が僅かに変わる。

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