薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
坂上先生は周囲を見回した。
入口。
窓際。
奥。
残っている人々。
「……随分と大掛かりですね」
「そうですね」
陸斗さんはあっさり答えた。
「大掛かりにせざるを得ない程度には、お二人が色々なところへ手を広げていらっしゃったので」
坂上先生の眉が僅かに動く。
未來も椅子へ座り直した。
一拍遅れて、坂上先生も。
◇
「まず、ここから確認しましょう」
陸斗さんが言った。
「坂梨未來さん。あなたは事故より前から、神宮寺さんのご両親と面識がありましたね」
「……昔のことだから、よく覚えてない」
「では、ご両親へ投資の話を持ちかけたことも?」
「知らない」
「分かりました」
あっさり引いた陸斗さんに、未來の方が戸惑う。
でも、終わるわけがない。
「その点については、別の資料もあります」
レストランの奥から、茂樹先生が歩いてきた。
「久しぶりですね、坂上さん」
坂上先生の顔が変わる。
「……澤登茂樹」
「覚えていていただけて光栄です」
茂樹先生は柔らかく笑い、スクリーンを見る。
「私は会社と資産の流れについて確認したい」
何社も挟み。
代表者を変え。
事業を移し。
負債処理に見せ。
元の形が分からないほど枝分かれさせた資産。
でも、画面上では何本もの線が最後に一つへ集まる。
――坂梨未來。
「随分複雑にしましたね」
茂樹先生の声は穏やかだった。
「神宮寺さんのご両親の財産は、会社の負債に使われたことになっていました。しかし、実際の資金移動とは一致していない」
「……私の知らないところでやったことでしょ」
未來が言う。
「知らなかったと?」
「そうよ」
「なるほど」
茂樹先生が頷く。
「それなら、こちらも」
ヒールの音が響く。
「私は、知らなかったでは済まないと思うけどね」
玲奈さん。
腕には分厚いファイル。
目が。
怖い。
ものすごく怖い。
「九条玲奈……」
「ご存じで良かったわ」
テーブルへ資料を置く。
「私は神宮寺家の件だけじゃなく、別の企業案件からあなたの会社を追っていたの」
スクリーンへ別の企業名が並ぶ。
「企業間の契約、役員変更、資金移動、関係者の接触記録。複数案件で、よく似た流れが出ている」
「証拠は?」
坂上先生が言う。
玲奈さんの眉が動いた。
「材料があるから、ここで話してるのよ」
「推測だけなら――」
「推測?」
声が低くなる。
「私が推測だけでここまで来ると思ってる?」
怖い。
「あなた、本当に杜撰なのよ。複雑にしたつもりでしょうけど、痕跡を残し過ぎ」
出た。
玲奈さん。
完全に怒ってる。
坂上先生の表情が少しずつ固くなっていく。
その間にも、スクリーンは進んだ。
会社。
資金。
名義。
そして事故。
「では」
別の声。
「次は僕から」
暢さんだった。
タブレットを手に現れる。
「坂梨未來さん。事故当日、運転していたのはあなたですね」
「知らない」
「そうですか」
暢さんも、そこで争わない。
映像が切り替わる。
事故当日の移動。
車両。
時刻。
関係者の記録。
その後に出頭した馬淵信治郎。
馬淵と未來の関係。
さらに。
五歳の子ども。
「馬淵さんは、この子を自分の子だと思っていた可能性がある」
坂上先生の顔が変わった。
未來の唇も僅かに動く。
そして。
鑑定記録。
父。
坂上幹司。
母。
坂梨未來。
二人の間に、初めてはっきりとした亀裂が走った。
「これ……」
未來が声を失う。
「どこで」
坂上先生の声が低くなる。
暢さんは表情を変えなかった。
「今、重要なのは内容でしょう」
静かな足音。
今度は鈴子さんだった。
「お二人とも」
その声で、未來も坂上先生もそちらを見る。
「随分と長いこと、人を利用してきたようですね」
未來が目を細める。
「……誰なの、あなた」
「澤登鈴子です」
それだけだった。
でも、坂上先生は知っていたらしい。
顔色が僅かに変わる。
入口。
窓際。
奥。
残っている人々。
「……随分と大掛かりですね」
「そうですね」
陸斗さんはあっさり答えた。
「大掛かりにせざるを得ない程度には、お二人が色々なところへ手を広げていらっしゃったので」
坂上先生の眉が僅かに動く。
未來も椅子へ座り直した。
一拍遅れて、坂上先生も。
◇
「まず、ここから確認しましょう」
陸斗さんが言った。
「坂梨未來さん。あなたは事故より前から、神宮寺さんのご両親と面識がありましたね」
「……昔のことだから、よく覚えてない」
「では、ご両親へ投資の話を持ちかけたことも?」
「知らない」
「分かりました」
あっさり引いた陸斗さんに、未來の方が戸惑う。
でも、終わるわけがない。
「その点については、別の資料もあります」
レストランの奥から、茂樹先生が歩いてきた。
「久しぶりですね、坂上さん」
坂上先生の顔が変わる。
「……澤登茂樹」
「覚えていていただけて光栄です」
茂樹先生は柔らかく笑い、スクリーンを見る。
「私は会社と資産の流れについて確認したい」
何社も挟み。
代表者を変え。
事業を移し。
負債処理に見せ。
元の形が分からないほど枝分かれさせた資産。
でも、画面上では何本もの線が最後に一つへ集まる。
――坂梨未來。
「随分複雑にしましたね」
茂樹先生の声は穏やかだった。
「神宮寺さんのご両親の財産は、会社の負債に使われたことになっていました。しかし、実際の資金移動とは一致していない」
「……私の知らないところでやったことでしょ」
未來が言う。
「知らなかったと?」
「そうよ」
「なるほど」
茂樹先生が頷く。
「それなら、こちらも」
ヒールの音が響く。
「私は、知らなかったでは済まないと思うけどね」
玲奈さん。
腕には分厚いファイル。
目が。
怖い。
ものすごく怖い。
「九条玲奈……」
「ご存じで良かったわ」
テーブルへ資料を置く。
「私は神宮寺家の件だけじゃなく、別の企業案件からあなたの会社を追っていたの」
スクリーンへ別の企業名が並ぶ。
「企業間の契約、役員変更、資金移動、関係者の接触記録。複数案件で、よく似た流れが出ている」
「証拠は?」
坂上先生が言う。
玲奈さんの眉が動いた。
「材料があるから、ここで話してるのよ」
「推測だけなら――」
「推測?」
声が低くなる。
「私が推測だけでここまで来ると思ってる?」
怖い。
「あなた、本当に杜撰なのよ。複雑にしたつもりでしょうけど、痕跡を残し過ぎ」
出た。
玲奈さん。
完全に怒ってる。
坂上先生の表情が少しずつ固くなっていく。
その間にも、スクリーンは進んだ。
会社。
資金。
名義。
そして事故。
「では」
別の声。
「次は僕から」
暢さんだった。
タブレットを手に現れる。
「坂梨未來さん。事故当日、運転していたのはあなたですね」
「知らない」
「そうですか」
暢さんも、そこで争わない。
映像が切り替わる。
事故当日の移動。
車両。
時刻。
関係者の記録。
その後に出頭した馬淵信治郎。
馬淵と未來の関係。
さらに。
五歳の子ども。
「馬淵さんは、この子を自分の子だと思っていた可能性がある」
坂上先生の顔が変わった。
未來の唇も僅かに動く。
そして。
鑑定記録。
父。
坂上幹司。
母。
坂梨未來。
二人の間に、初めてはっきりとした亀裂が走った。
「これ……」
未來が声を失う。
「どこで」
坂上先生の声が低くなる。
暢さんは表情を変えなかった。
「今、重要なのは内容でしょう」
静かな足音。
今度は鈴子さんだった。
「お二人とも」
その声で、未來も坂上先生もそちらを見る。
「随分と長いこと、人を利用してきたようですね」
未來が目を細める。
「……誰なの、あなた」
「澤登鈴子です」
それだけだった。
でも、坂上先生は知っていたらしい。
顔色が僅かに変わる。