薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「……何か、まだやるつもりだったの?」

自分でも驚くほど、声は静かだった。

「人の家族を壊して、両親を死なせて、会社を奪って、お金まで持っていって。その次は何をするつもりだったの?」

「違う、私は――」

「何が違うの」

未來が何を言おうとしても、もう聞きたくなかった。

「私は何も知らない!」

未來が叫ぶ。

「全部、坂上先生に言われるままに動いただけ! 私は何も知らなかったし、こんなことになるなんて思ってなかった!」

坂上先生の眉が僅かに動いた。

でも、未來はもうそちらを見なかった。

私を見る。

「奏、信じて」

その声。

昔と同じだった。

困った顔をして。

少し声を弱くして。

相手が助けてくれると分かっている人の話し方。

そして。

「私たち、友達でしょ?」

その瞬間。

頭の中で。

ぷつん、と。

何かが切れた。

「…………は?」

自分でも驚くくらい低い声が出た。

未來の目が見開かれる。

「何、言ってるの?」

もう。

笑う必要なんてない。

何も知らない頃の神宮寺奏を演じる必要も。

「友達?」

その言葉を口にしただけで、今まで押し込めていたものが一気に込み上がってきた。

「一度だって、未來は私のこと友達だと思ってなかったでしょう」

「奏……」

「都合のいい駒だっただけじゃない」

未來が何か言おうとする。

でも、止まらなかった。

「私がお金を持っていた頃は近づいて。両親にも近づいて。使えるものは全部使った。今日だって同じでしょう?」

「違う!」

「違わない」

今度は静かに言えた。

「男に騙されて、お金までなくして、自分より下に落ちた私なら、また好きなように扱えると思ったから来たんでしょう?」

未來の顔が強張る。

「だから三分で返事した」

「それは心配で――」

「しかも、坂上先生まで呼んだ」

私は坂上先生を見る。

「私がお金に困ってるって聞いて。また入り込めると思ったんですよね?」

「そんなつもりは――」

「もういいです」

不思議なくらい、頭の中は静かだった。

私は未來を見る。

「ちなみに、私、お金には困ってないから」

「……え?」

「全然」

少しだけ、口元が緩んだ。

「むしろ、腐るほどある」

「…………」

未來の顔が止まった。

「男にも騙されてないし、お金もなくしてない。私は何も困ってない」

隣で陸斗さんがほんの少し笑ったのが分かった。

「全部……嘘?」

「そう」

迷わなかった。

「今日ここへ来てもらうための嘘」

未來の顔から、また色が引いた。

「私はね」

声が少しだけ震えた。

でも、止めない。

「ただ真実が知りたかっただけ」

何で両親が死ななきゃいけなかったのか。

何で会社を奪われたのか。

何で私の人生が、あんなふうに壊れたのか。

「それが知りたくて、ここまで調べてもらったの」

未來は何も言わない。

「だから」

目を逸らさなかった。

「そろそろ、ちゃんと話して」

妙な沈黙が落ちた。

未來も。

坂上先生も。

私を見ている。

なのに。

隣から、ほんの僅かに息を堪えるような音。

横を見る。

陸斗さんが口元へ手を当てていた。

目が。

笑ってる。

暢さんも顔を逸らしている。

大雅さんなんて、俯いたまま肩が僅かに揺れていた。

「……何ですか?」

「いえ」

「何で笑いそうになってるんですか!」

大雅さんが咳払いをする。

「神宮寺さん、思ったより言うなと思って」

「何がですか」

「腐るほど金がある、とか」

「そこ!?」

今。

そこ拾います?

「事実なんでしょう?」

暢さんまで笑いを堪えている。

「事実ですけど!」

こっちは、ずっと我慢してたんです。

友達でしょなんて言われて。

何も知らないって逃げようとして。

急に全部、坂上先生のせいにして。

そりゃ。

切れますよ。

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