薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
最後に。

「坂梨未來さん」

心臓が少しだけ重くなる。

「現在二十六歳、女性。高校からの友人」

「はい」

「氏名の漢字を」

「坂道の坂に、梨。未來は、未だの未に、来るの旧字体の來です」

その瞬間。

陸斗さんのペンが止まった。

ほんの一瞬。

でも、確かに止まった。

「……何か気になりました?」

「いえ。特に」

すぐにまた書き始める。

でも今、止まったよね?

「ただ」

「はい?」

「馬鹿みたいに、そこまで同じ人間に騙され続ける人もいるんだなと、感心しただけです」

「…………は?」

はー。

そんなにはっきり言う?

相手、相談者じゃん。

私なんだけど。

「陸斗!」

純さんの声が飛ぶ。

「それ、相談者に言うこと?」

「純さん。聞こえていますよ」

「聞こえるように言ったの!」

「先生」

愛梨さんまで眉を寄せる。

「もう少し言い方があるかと」

「何か問題でも?」

「あります」

即答。

「事実を述べただけですが」

「そういうところです」

「……?」

本気で分かっていない顔をしている。

顔はいい。

仕事も、たぶん凄い。

でも、性格は相当難あり。

そんなことを考えていると――。

ピピピピッ。

タイマーが鳴った。

「一時間です」

愛梨さんがタイマーを止める。

「……本当にきっかり」

思わず呟く。

「ほらね!」

純さんが笑った。

陸斗さんは手元の資料を確認する。

「本日の無料相談は――」

そこで止まった。

「……いえ」

一枚前へ戻る。

「一つ、聞きそびれました」

「はい?」

「時間は過ぎていますが、私が聞きそびれたことなので、ここからは無料で結構です」

しん――。

一瞬、事務所全体が静かになった。

そして。

「えぇぇぇ――!?」

フロア中から声が漏れた。

私まで振り返る。

「ちょっと! こんなの初めてじゃない?」

純さんが目を丸くする。

征さんまで、持っていた書類から顔を上げた。

「自分が忘れたから無料?」

「聞いたことないぞ」

聖子さんも奥から顔を出す。

「無料でいいって……どうしたのかしら?」

さらに向こうから。

「熱でも出たのか?」

茂樹先生。

……言われたい放題。

でも陸斗さんは、気にも留めない。

「あちらの声は無視してください」

「無視できる音量じゃないですけど」

「問題ありません」

何が?

「愛梨さん。あと三十分お願いします」

「タイマーですね?」

「はい」

まだ掛けるんだ。

愛梨さんが再び操作する。

その直後、陸斗さんがこちらを見る。

「三十分以内には終わります。神宮寺さん、お時間は大丈夫ですか?」

「……え?」

「あ……はい。大丈夫です」

今。

この人。

私に時間の確認した?

遠くから。

「相手に確認したぞ」

「どうしたのかしら?」

「今日の陸斗、絶対おかしいわよ」

「病気か?」

「皆さん」

陸斗さんの声が低くなった。

それだけで、一瞬にして静かになる。

……凄い。

「質問します」

何事もなかったように戻った。

「ご両親についてです」

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