薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
その言葉を聞いた瞬間、頭の奥を何かが横切った。

床に落ちた黒いフレーム。

窓から差し込む光。

古い本の匂い。

私は思わず眉を寄せる。

「あなたが拾ってくれました。それから、私にメガネを渡しながら言ったんです」

一言ずつ。

まるで十六年前の声を、そのまま覚えているみたいに。

「『痩せて、髪の毛切って、コンタクトにしたら、絶対人生変わるよ』って」

「…………」

「それから――『お兄さん、綺麗な顔してる』」

胸の奥がざわついた。

「『目も嘘つかなそう』」

――その言葉。

「『真面目な、真実を追いかけるヒーローみたい』」

その瞬間。

――あ。

全部を一度に思い出したわけじゃない。

でも、ばらばらだったものが少しずつ形になっていく。

図書館の窓から差し込む柔らかな光。

床へ落ちた黒縁メガネ。

それを拾った私。

その向こうにいた、大きくて、少し俯きがちで、髪が目にかかっていて、何となく話しかけにくそうなのに。

メガネが外れた時に見えた目だけが、すごく綺麗だった男の人。

「……嘘」

声が勝手に漏れた。

私は目の前の陸斗さんを見る。そして、記憶の奥にいる人を重ねる。

「……あのお兄さん?」

陸斗さんの表情が、ほんの少しだけ崩れた。

「はい」

「え?」

「私です」

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