薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
嬉しいのか。

怖いのか。

困っているのか。

自分でも分からない。

ただ、目の前の二本の線だけが。

やけにはっきりしていた。

私は検査薬を箱へ戻し、バッグへ入れた。

そのまましばらく。

狭い個室の中で動けなかった。

病院。

行かなきゃ。

そう思う。

でも。

その前に。

両親のお墓へ行きたかった。



町へ入ると、景色が変わった。

東京とはまるで違う。

低い家々。

畑。

遠くに連なる山。

道端には季節の草花が揺れ。

その向こうには。

富士山が見えた。

両親が眠る墓地は、その町のさらに奥にある。

車の音もほとんど聞こえず、風がゆっくりと墓地を抜けていく。

墓石の前へ立った瞬間。

それまで胸の奥で張りつめていたものが、ほんの少しだけ緩んだ。

「……久しぶり」

返事なんてない。

分かっている。

それでも昔から、ここへ来ると二人が目の前にいるみたいに話してしまう。

「遅くなって、ごめんね」

手を合わせる。

未來のこと。

坂上幹司のこと。

事故のこと。

会社のこと。

まだ、全てが法的に終わったわけじゃない。

それでも。

真実は分かった。

「二人のせいじゃなかった」

声が少しだけ震えた。

「ちゃんと、分かったよ」

ずっと。

何で私だけ残ったんだろう。

そう思っていた。

でも。

今は少し違う。

「ちゃんと生きてるよ。何か……凄い人たちに囲まれてるけど」

思わず笑う。

元裁判官。

弁護士。

検事。

警察関係。

人気芸能人までいる。

二人が聞いたら。

きっと。

『何だそれ』

って言うと思う。

「それからね」

私は左手を上げた。

婚約指輪が、柔らかな昼の光を受けて小さく輝く。

「結婚してくださいって言われて……受けちゃった」

子どもの頃。

図書館で会った、あのお兄さんだったことも話した。

太って。

黒縁メガネで。

髪も野暮ったくて。

私が勝手なことを言った、あの人。

「本当に人生変えちゃったんだって」

そこまでは。

笑って話せた。

< 226 / 290 >

この作品をシェア

pagetop