薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
でも。

バッグの中にある検査薬を思い出した瞬間。

言葉が止まった。

私はそっと、自分のお腹へ手を置いた。

まだ病院にも行っていない。

本当に妊娠しているのか。

ちゃんと育っているのか。

何も分からない。

「……私」

声が詰まる。

しばらく墓石を見つめ、ようやく小さく呟いた。

「どうしたらいいんだろう、お母さん」

怖かった。

何が怖いのか、自分でもよく分からない。

陸斗さんへ言うことなのか。

妊娠そのものなのか。

幸せになることが。

まだ怖いのか。

ただ。

一人で答えを出せる気がしなかった。

墓地を出たあと。

ふと。

一人の顔が浮かんだ。

――橋本恵麻。

小学校の頃からずっと一緒だった、唯一の幼馴染。

小学校卒業と同時に親の都合で北海道へ移り、それからは手紙。

大人になってからはLINE。

離れていても、ずっと繋がっていた。

私が両親を亡くした時も。

ずっと連絡をくれた人。

私はスマートフォンを取り出し、しばらく名前を見つめてから電話を掛けた。

数回の呼び出し音。

『もしもし』

懐かしい。

少し低めの声。

「……恵麻」

『何。その声』

それだけで。

分かるんだ。

「今、大丈夫?」

『仕事終わったところ。どうしたの』

「……私、妊娠したかもしれない」

一瞬。

向こうが静かになった。

『“かもしれない”って何』

「検査薬、陽性だった」

『病院は?』

「まだ」

『相手は?』

「……婚約者」

また、少し沈黙。

『今どこ』

「静岡。お父さんたちのお墓に来てる」

『そっか』

短い返事。

そのあと、恵麻は迷いなく言った。

『じゃあ、そのまま来なさい』

「……どこに?」

『北海道に決まってるでしょ』

「え?」

『一人で考えても、あんたろくなこと考えないから』

「いや、でも急だし」

『今さら何言ってんの。小学校の時、泣いたら私んち来てたでしょ』

「それ何年前よ」

『関係ない。来なさい』

本当に。

変わってない。

恵麻。

男だったら絶対めちゃくちゃモテる。

というか。

女でも昔から、そこらの男の子よりよっぽど格好良かった。

「……分かった」

気づけば。

そう答えていた。
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