薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
早い。

どう考えても早すぎる。

昨日まで九州へ二泊三日の出張に行っていた人が、どうして翌朝には北海道にいるのよ。

そもそも、九州から北海道って、そんな勢いで移動する距離じゃないでしょう。

私が言葉を失っていると、真那斗さんがさらに追い打ちをかけた。

「征さんも一緒です」

「征さんまで!?」

その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが弾けた。

「逃げなきゃ」

「何?」

「とにかく今は会いたくない!」

まだ無理だ。

妊娠したことだけでも心の整理が追いついていないのに、三つ子だなんて、陸斗さんへどう伝えればいいのか全然分からない。

絶対に大騒ぎする。

病院はどうする。

仕事はどうする。

何を食べた。

何処へ行く。

誰と行く。

きっと私がまだ一つも考えられていないうちから、陸斗さんの頭の中では今後の予定が一気に組み立てられていく。

悪気がないのは分かっているし、それだけ心配してくれていることも知っている。

でも、今の私には、それすら受け止める余裕がなかった。

「ちょっとだけ……本当にちょっとだけ、時間が欲しいの!」

私は慌ててバッグを掴み、最低限の荷物だけを突っ込んだ。

「奏、何処行くの」

恵麻が呆れたように聞いてくる。

「分かんない!」

「分かんないのに逃げるの?」

「何処でもいいの! とにかく今は会いたくない!」

その瞬間。

ピンポーン。

玄関のチャイムが鳴った。

全員の動きが、ぴたりと止まる。

< 237 / 290 >

この作品をシェア

pagetop