薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
私は荷物を抱えたまま、ゆっくり壁の時計を見た。

十時三十二分。

「……早すぎませんか?」

十一時くらいって言ったでしょう。

まだ二十八分もある。

でも、こういう時の陸斗さんなら、二十八分くらい平気で縮めてきそうな気がする。

来た。

絶対に来た。

そう思って玄関を凝視していると、真那斗さんが仕方なさそうに立ち上がって扉を開けた。

「はい」

数秒後。

「ああ」

何、その反応。

やっぱり陸斗さん?

ところが、玄関の向こうから聞こえてきたのは、

『こちらにサインお願いします』

という、ごく普通の男性の声だった。

「……宅配便?」

「宅配便です」

紛らわしい!

もちろん宅配便の人には何の罪もないけれど、本気で寿命が縮んだ。

けれど次の瞬間、私は気づいてしまった。

開いている玄関。

その向こうには外。

――今しかない。

「奏?」

「行ってきます!」

「ちょっと!」

宅配便の人と入れ替わるように外へ飛び出し、何故か、

「ありがとうございました!」

とまで言い残して、私はそのまま走った。

そりゃもう、凄い勢いで。

後ろから恵麻の声が飛んでくる。

「奏!」

「今は無理!」

「待ちなさい!」

「無理!」

「何処まで行く気!」

「分かんない!」

北海道の朝の空気が冷たいとか、東京より空が広いとか、そんなことを感じる余裕なんて一ミリもなかった。

ただ少しでも、陸斗さんが来る場所から離れたくて、私は走った。
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