薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
これは、あとになって真那斗さんと征さんから聞いた話だ。

玄関を開けた真那斗さんの前に立っていた陸斗さんは、普段の隙のない姿から余裕だけを綺麗に抜き取ったような顔をしていたという。

その隣には、同じくほとんど眠れていない征さん。

そして陸斗さんは、挨拶より先に、

「奏は?」

と聞いたらしい。

開口一番。

やっぱり私。

「逃げた」

真那斗さんが答える。

「……何?」

「兄貴が北海道に着いたって分かった瞬間、走って逃げた。そりゃもう凄い勢いで。恵麻が追いかけたから、一人じゃないけど」

「恵麻……あっ、橋本さんか」

ようやく昨日、電話口に出た相手と結びついたらしい。

それでも陸斗さんの表情は晴れず、その横で征さんが静かに口を開いたという。

「昨日からこちらも、まともに寝ていません」

「…………」

「振り回されるこちらの身にもなっていただきたいです」

さすがの陸斗さんも、

「……すみません」

と謝ったらしい。

「兄貴、仕事は?」

「父さんに振ってきた」

「全部?」

「必要なところは全部。昨日の夜に起こして頼んだ」

「あー……だから父さんから苦言の連絡が来たのか」

そこで今度は、陸斗さんが弟へ聞き返した。

「真那斗こそ仕事は?」

「俺は休みだよ」

あまりにもあっさり返され、何とも言えない顔をしたらしい。

もっとも、昨夜からあちこちを巻き込んでいたのは陸斗さんの方だった。

大雅さんには仕事中に何度も連絡して怒られ、大和さんには一時的に着信拒否。暢さんはとうとうブチ切れ。

玲奈さんからは、征さんが、

『神宮寺さんには聞かせない方がいい』

と判断するほどの文句を浴び、耀さんだけはずっと笑っていたらしい。

鈴子さんに至っては、

『まあまあ、とうとう奏ちゃんに逃げられたの?』

と、心配するより先に何故か楽しそうだったという。
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