薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
カランコロンッ!

隠れ家カフェの静かな空気をぶち壊すようにドアベルが鳴り、何気なく入口へ視線を向けた私は、その場で固まった。

そこにいたのは、昨日からほとんど眠っていないことが一目で分かるほど疲れ切った陸斗さん。その後ろには征さんまでいる。

二人とも、どう見ても爽やかな北海道観光に来た人の顔ではない。

特に陸斗さんは、普段の余裕を全部何処かへ置いてきたような顔をしていた。

店内を見回していたその視線が私を捉えた瞬間、陸斗さんの表情がほんの一瞬だけ崩れた。

心の底から安心した。

そんな顔だった。

その表情を見た途端、胸の奥がちくりと痛んだ。

昨日から連絡もせず、北海道まで来た挙げ句、今朝は本人が来ると分かった途端に逃げ出したのだから、心配させた自覚くらいはある。

あるけれど。

次の瞬間。

普段なら絶対にそんなことを言わない人が、店中に響く声で叫んだ。

「見つけたぞー!」

「きゃーーーーー!」

私は反射的に椅子から立ち上がりかけた。

「来た!」

「来たね」

「恵麻、何でそんな冷静なの!」

「来るって言ったじゃん」

ほんの一瞬だけ、本気で逃げようと思った。

でも入口には陸斗さん、その後ろには征さん。

出口は完全に塞がれている。

「裏口!」

「厨房」

「窓!」

「妊婦が窓から逃げるな」

「…………」

詰んだ。

完全に。

陸斗さんはそのまま真っ直ぐこちらへ歩いてきた。

怒鳴るわけでも、責めるわけでもない。それどころか私の目の前まで来ると、一度だけ大きく息を吐いてから静かに言った。

「奏。座ってください」

「……嫌です」

「座って」

声は穏やかだったのに、何故か逆らえる気がしない。

しかも近くで見れば見るほど、陸斗さんがどれだけ疲れているのかが分かった。目の下には薄く隈が残り、顔色もいつもより悪い。

本当に寝ていないんだ。

そう思った瞬間、さっきまであった逃げたい気持ちが少しだけ萎んだ。

私は諦めて椅子へ座る。

それを確認して、陸斗さんもようやく肩の力を抜いた。
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