薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
これ以上カフェで話を続けても仕方がないということで、征さんが確保してくれていたホテルへ移動することになった。

ラウンジへ入った頃には、さすがに全員が疲れ切っていた。昨日から精神的に振り回され続けている私も相当なものだけれど、九州からほとんど眠らないまま北海道まで追いかけてきた陸斗さんと征さんは、それ以上だと思う。

……まあ、私は精神的にだけじゃなく、本当に走ったけど。

「茂樹先生から、陸斗さんは明日も休んで構わないと連絡が来ています」

征さんの言葉に、陸斗さんが何とも言えない顔をした。

「三つ子のことは?」

私が聞くと、征さんは静かに首を振る。

「まだ伝えていません」

「絶対まだ言わないでください!」

思わず即答すると、征さんは少しだけ笑った。

「そのつもりです」

「今知られたら、みんな押し寄せてきますよね?」

「来るでしょうね」

真那斗さんまで当然のように頷いたので、私は思わず額へ手を当てた。

それだけは本当に無理だ。

私は昨日、妊娠していることを初めて知り、その数時間後には三つ子だと告げられたばかりなのだ。自分の中ですらまだ何一つ整理できていないのに、そこへ澤登家の面々が総出で押し寄せてきたら、喜ぶ以前に私の処理能力が完全に止まる。

「それは東京へ戻ってからでいいでしょう」

陸斗さんが静かに言った。

その言葉が少し意外で、私は思わず隣を見る。

いつもの陸斗さんなら、病院は何処にするのか、仕事はどうするのか、生活はどう変えるのかと、私より先に全部考え始めそうなのに、今日は何も急かしてこない。

「……はい」

そう答えると、ほんの少しだけ肩の力が抜けた。

明日、東京へ帰る。

病院のことも、仕事のことも、お腹にいる三人のことも、帰ってから二人で一つずつ考えればいい。少なくとも今日だけは、もう何かを決めようとしなくてもいい。

そんな空気になったところで、真那斗さんが陸斗さんを見ながら笑った。

「兄貴も父親になるんだな。それも三つ子」

「……待って」

私は、その言葉の一部分に引っかかった。

「今、“も”って言いました?」

「ああ。俺もさ。恵麻が妊娠してるから父親になるんだよ」

私は知っているけれど、陸斗さんは知らない。

そこへ恵麻が、

「二十週。女の子」

と、何でもないことのように付け加えた。

陸斗さんはしばらく二人を見つめ、それからゆっくり私と恵麻を交互に見た。

「待て。じゃあ今朝……妊婦二人で逃げたのか?」

私と恵麻は、揃って黙る。

「奏は三つ子で、橋本さんは二十週。その二人で全力で走った?」

「……成り行きで」

「成り行きで妊婦二人が走るな!」

とうとう陸斗さんが両手で頭を抱えた。

「……頭抱えたい」

「もう抱えてますよ」

征さんの冷静すぎる一言に、真那斗さんが吹き出した。

私もつられて笑いそうになったけれど、陸斗さんの疲れ切った顔を見て、さすがにやめた。

今日はもう、本当に何も起こさない方がいい。
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