薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
征さんの背中が見えなくなるまで見送ってからロビーを出ると、今度は見覚えのある二人がこちらへ手を振っているのが見えた。

純さんと愛梨だった。

「おかえりー! 二人とも待ってたよ!」

純さんが大きく手を振りながら近づいてくる。

「おかえりなさい、神宮寺さん。陸斗先生も、お疲れさまでした」

「ただいまです」

「ただいま戻りました」

私たちがそれぞれ返すと、純さんが楽しそうに笑った。

「まさか二人して、ロビーの真ん中で征さんに頭下げまくってるとは思わなかったけど」

「……見てたんですか?」

「ばっちり」

愛梨まで口元を緩める。

「あれはあれで、少し面白かったです」

「愛梨さんまで!」

「笑ったら駄目ですよ、純さん」

「愛梨ちゃんも笑ってたじゃん」

「少しだけです」

「二人とも笑ってるじゃないですか!」

隣を見ると、陸斗さんはもう反論する気力もないらしく、小さく息を吐いただけだった。

「さあ、帰ろう。みんな待ってるから」

純さんがそう言った瞬間、私は嫌な予感を覚えた。

「……みんな?」

愛梨が少し困ったように笑う。

「皆さん、朝から落ち着かなくて。特に茂樹先生は、昨晩帰宅されたあと、そのまま撃沈されたそうなんですけど」

「撃沈?」

「帰ってすぐ寝たみたい。でも今日は朝から大張り切り」

純さんが続ける。

「……何を?」

「それは帰ってからのお楽しみ」

その言い方が一番怖い。

それでも今さら逃げるわけにもいかず、私たちは純さんたちの車に乗り、そのまま五反田へ戻った。

窓の向こうを流れていく東京の街並みを眺めながら、私は何度か自分のお腹へ手を当てそうになって、そのたびにやめた。

まだ見た目には何も分からない。

ここに三人いるなんて、誰が見ても気づくはずがない。

そして今のところ、東京でそのことを知っているのは征さんだけだった。

妊娠していることまで隠し通すつもりはない。

仕事のこともあるし、これから体調がどう変化するかも分からない以上、周囲の協力が必要になる時はきっと来る。

だから、東京へ戻ったら妊娠していることは伝えようと、北海道を出る前に陸斗さんと決めていた。

ただし、三つ子であることまでは、まだ言わない。

そのことだけは、これから先の生活や仕事、病院のことも含めて二人で一度きちんと考えてから、改めて伝えたいと思っていた。

昨日までの私なら、それすら一人で決めようとしていたかもしれない。

でも今は、隣にいる人と相談して決めた。

たったそれだけのことなのに、少しだけ気持ちが軽かった。
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