薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
ビルへ戻ると、一階のカフェにはCLOSEDの札が掛かっていた。

いつもならまだ人の出入りがある時間なのに、今日は妙に静かだった。

「今日は閉めてるんですね」

ガラス越しに店内を見ながら言うと、純さんが「ああ。今日はね」とだけ答える。

明らかに含みのある返事だったけれど、詳しく聞く前に上へ行こうと促され、そのまま事務所へ向かった。

扉を開けた瞬間だった。

「奏ちゃん!」

奥から声が飛んできたと思ったら、聖子さんがものすごい勢いでこちらへ駆け寄ってくる。

「無事に帰ってきた! 大丈夫? 何処か痛いところない? 変なことされてない?」

「えっ?」

いきなり全身を確認するように見られ、私は戸惑いながら首を振った。

「大丈夫です。何もされてません」

「本当に?」

「本当ですって!」

私が答えると、聖子さんはようやく少し安心したらしい。

ところが次の瞬間、今度は私の隣にいる陸斗さんへ顔を向けた。

「陸斗も大丈夫? 奏ちゃんに襲われてない?」

「……聖子さん」

陸斗さんが心底疲れた顔で名前を呼ぶ。

私は一瞬、意味を理解できず、そのあと遅れて声を上げた。

「ちょっと、物騒なこと言わないでください!」

後ろで純さんが吹き出し、愛梨まで口元を押さえている。

聖子さんは改めて私たち二人を見て、ようやくほっとしたように表情を緩めた。

「とにかく、二人とも無事に帰ってきて良かった」

「ご心配をお掛けしました」

私が頭を下げると、陸斗さんも隣で「すみませんでした」と続けた。

すると聖子さんは、「もういいの。帰ってきたんだから」と笑い、それから何故か妙に楽しそうな顔で私たちを促した。

「ほら、今日はもう事務所も閉めるから、早く上に行くよ!」

「上?」

「澤登家」

私は思わず陸斗さんを見る。

陸斗さんも少しだけ嫌そうな顔をした。

「父さん、何してるんですか」

「それがね」

聖子さんはものすごく楽しそうだった。

「茂樹兄さん、朝からメッチャ張り切ってる」

その一言だけで、嫌な予感はさらに強くなった。
< 257 / 290 >

この作品をシェア

pagetop