薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「それより」

純が腕を組む。

「奏さん、一人で帰しちゃったけど大丈夫かな」

「今すぐ危険があると判断できる材料はありません」

陸斗が答える。

「でも十二億円よ?」

純の声が少し大きくなる。

「その情報が漏れたら、それだけで面倒なことになるじゃない」

愛梨も頷いた。

「ご本人が誰にも話していなければいいですが」

「あ」

聖子が声を上げる。

「それ、未來さんに話したか聞いてないわね」

全員の動きが止まった。

「……そうですね」

愛梨が呟く。

「聞いてません」

純まで真顔になった。

「陸斗」

「分かっています」

陸斗は受付票へ手を伸ばした。

「連絡先は?」

「あら」

聖子が即座に言う。

「ちゃんと先に聞いてるわよ」

「……」

「受付したの私よ? 名前、生年月日、住所、電話番号。必要事項はちゃんと確認してます」

純が笑う。

「さすが聖子さん」

「当たり前でしょう」

聖子は受付票を陸斗へ渡した。

「あなたみたいに、全部取り調べみたいに聞かなくてもね」

「必要な情報を確認しているだけです」

「だから、言い方なのよ」

「今はそこではありません」

陸斗は番号を確認した。

「何と言って呼び戻す?」

茂樹が尋ねる。

「嘘をつく必要はないでしょう。先ほどの内容を整理した結果、追加で確認したいことが出た。今日中に伝えておいた方がいいこともある。それで十分です」

女性が頷く。

「そうね。怖がらせすぎる必要もないし、隠す必要もない」

純が覗き込む。

「じゃあ、電話して」

「今します」

数回の呼び出し音のあと、電話が繋がった。

『はい』

「神宮寺さん。澤登です」

『……はい? どうされました?』

「先ほどのお話を整理していたところ、追加で確認したい点がいくつか出ました」

『またですか?』

「はい」

少し間があった。

『……今度もタイマーですか?』

ぶっ、と後ろで純が吹き出した。

陸斗の眉間に皺が寄る。

「今回は違います」

『珍しいですね』

「……」

聖子まで笑いを堪えている。

「それと、今日中に一度お伝えしておいた方がいいことがあります」

電話の向こうの空気が変わった。

『何か分かったんですか?』

「まだ断定できる段階ではありません。ただ、確認しておいた方がいい点が出ています。まだ事務所からそれほど離れていないのであれば、一度戻っていただけますか?」

『今ですか?』

「はい」

『どれくらい掛かります?』

陸斗が時計を見る。

「一時間は取りません」

純が小声で言った。

「タイマーは?」

「純さん。聞こえています」

『……誰かいます?』

「います」

『さっきより賑やかじゃないですか?』

「気にしないでください」

『気になりますけど』

電話の向こうから、少しだけ笑ったような声が聞こえた。

『まあ、まだそんなに離れてないので。戻ります』

「ありがとうございます」

『……え?』

「何ですか」

『今、ありがとうございますって言いました?』

「言いましたが」

『……いえ。何でもないです』

電話が切れた。

陸斗がスマートフォンを下ろし、振り返る。

全員が見ていた。

「……何ですか」

純がにやにやする。

「いやぁ?」

愛梨まで真顔で頷いた。

「今日は珍しいことが多いですね」

「何がです」

「先生が自然にお礼を言いました」

「言いますよ」

「滅多に聞きません」

「愛梨さんまで何なんですか」

女性が、ぱん、と手を叩いた。

「はい。戻ってくるまでに整理しましょう」

「その前に」

陸斗が釘を刺す。

「勝手に何かを決めないでください」

「あら、何の話?」

「分かって言ってますよね」

女性はにっこり笑った。

「さあ?」

陸斗には、嫌な予感しかしなかった。

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