薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
それから、それほど時間は経たなかった。

澤登法律事務所の扉を開ける。

「失礼します……」

中へ入った私は、そのまま足を止めた。

「……え?」

何かが違う。

いや、明らかに違う。

さっきまで何もなかった壁際に、大きなホワイトボードが置かれていた。

その中央に書かれているのは――神宮寺奏。

私の名前だった。

そこから何本もの線が伸び、神宮寺基、神宮寺美加、坂梨未來、髙橋耕史、深町淳二、新庄篤郎、馬淵信治郎、坂上幹司へと繋がっている。

さらに、五月二十五日、六月二日、交通事故、相続、会社、資産、弁護士……。

いくつもの文字が並び、その間を矢印や疑問符が結んでいた。

私がさっき話したことが、全部、一枚の板の上で繋がり始めている。

……何、これ。

「お帰りなさい」

愛梨さんが声を掛けてくれた。

「あ……ただいま」

反射的に答えてから、すぐに気づく。

「いや、違いますね。すみません」

ここ、私の家じゃない。

純さんが吹き出した。

「いいのよ。そのうち――」

「純さん」

陸斗さんの低い声が飛ぶ。

「余計なことを言わないでください」

「はいはい」

私は、まだホワイトボードから目を離せなかった。

「……あの」

「はい」

征さんが顔を上げる。

「ここ、法律事務所ですよね?」

「そうですが」

「捜査会議とかじゃないですよね?」

一瞬、誰も答えなかった。

何で黙るの。

「違います」

少し間を置いて、陸斗さんが答える。

「……本当に?」

「情報を整理しているだけです」

整理。

これが?

「私が帰ってから、そんなに時間経ってないですよね?」

「経っていません」

「なのに、何でこんなことになってるんですか」

自然と視線が征さんへ向いた。

征さんは何事もなかったように答える。

「必要な情報を確認しただけです」

だけ?

これで?

本当に、この人は何者なんだろう。

< 27 / 152 >

この作品をシェア

pagetop