薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
さっきまであれだけ賑やかだったのが嘘のように、全員が固まっている。

最初に声を出したのは聖子さんだった。

「……え?」

その一言を合図にしたように、今度は部屋中から声が飛んできた。

「えええええええっ!?」

「ちょっと待って、奏ちゃん妊娠!?」

「いつ分かったの!?」

「だから北海道へ行ったの?」

「体調大丈夫なの!?」

「病院は?」

「仕事はどうするの?」

「ちょっと待ってください! 一人ずつ!」

一斉に飛んでくる質問へ、私は思わず両手を上げた。

こうなるだろうとは思っていた。

それなのに茂樹先生だけが、何故か納得したように頷いている。

「やっぱりね」

「やっぱりって何ですか!」

思わず指を差すと、茂樹先生は少し笑った。

「何となく、そんな気がしてたんだよ。最近の奏さん、眠そうだったし、食べ方もちょっと変わってたから」

「見過ぎです!」

「それに陸斗も、いつも以上に妙なところを気にしてたしね」

「それはいつもです!」

私が即座に返すと、何故か全員が納得したように頷いた。

「そこは否定してくださいよ!」

思わず隣を見ると、陸斗さんまで「まあ、それはそうですね」と頷いている。

あなたまで認めるんですか。

すると鈴子さんが、ぱっと顔を輝かせた。

「じゃあ、まず何を用意したら――」

「姉さん」

聖子さんがすぐに制止する。

「まだ何も決めなくていいでしょう。奏ちゃんと陸斗くんが考えることなんだから」

鈴子さんが言葉を止めた。

私も少し驚いて聖子さんを見る。

「もちろん、助けが必要なら何でも言ってね。病院でも仕事でも、頼ってくれて構わない。でも、こっちで先に全部決めるのは違うでしょう?」

「……はい。ありがとうございます」

胸の奥にあった小さな緊張が、少しだけほどけていく。

すると暢さんが、今度は陸斗さんを見る。

「お前もだぞ」

「何がですか?」

「勝手に病院決めたり、仕事休ませたり、食事管理始めたりするなよ」

「まだしてません」

「今、“まだ”って言ったな」

部屋中の視線が陸斗さんへ集まった。

陸斗さんは一度黙り、それから観念したように答える。

「……相談します」

「よし」

何故か暢さんが監督役になっている。

私は思わず笑いそうになったけれど、その一方で少しだけ安心もしていた。

妊娠していることを伝えただけで、これだけの騒ぎになった。

ここで三つ子まで明かしたら、今度こそ収拾がつかなくなる。

私は隣の陸斗さんと目を合わせた。

陸斗さんも何も言わない。

今は、妊娠していることだけでいい。

お腹の中に三人いることは、もう少しだけ私たち二人の中に置いておきたかった。
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