薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
妊娠報告だけで相当な時間を使ったはずなのに、この家族はそこで終わらなかった。

騒ぎがようやく落ち着いた頃、茂樹先生が何故か急に姿勢を正す。

「さて、もう一つ」

その声を聞いただけで嫌な予感がした。

「何ですか」

「お祝いにふさわしいものがあります」

そう言ってテーブルの下から取り出したのは、一枚の紙だった。

見覚えがある。

というより、見間違えようがない。

婚姻届。

「何で持ってるんですか!」

「準備した」

「誰が!」

「俺」

「何で!」

「婚約したから」

「だからって!」

しかも、よく見ると証人欄にはすでに名前が書かれている。

私は婚姻届を手に取り、思わず二度見した。

「証人……茂樹先生と聖子さん?」

「はい」

聖子さんがにこっと笑う。

「帰ってくる前に書いたの」

「本人たちがいないうちに!?」

「証人欄だけだから問題ないよ」

茂樹先生が平然と答える。

「問題はそこじゃありません!」

「提出は二人で決めた時にすればいいんだし」

「だったら今出さなくてもいいでしょう!」

「勢いも大事かなと思って」

「大事じゃないです!」

隣を見ると、陸斗さんが婚姻届をじっと見ている。

その表情を見た瞬間、ものすごく嫌な予感がした。

「陸斗さん」

「はい」

「今すぐ出そうとか考えてませんよね?」

「…………」

「考えましたね?」

「少しだけ」

「駄目です!」

即答すると、周囲から笑い声が起きた。

「奏」

「駄目なものは駄目です!」

「でも」

「でもじゃありません!」

この人は本当に油断ならない。

すると茂樹先生が、今度はさらに楽しそうな顔をする。

「じゃあ、式は家族だけで小さくやる?」

「何で次の話に行くんですか!」

「レストランウェディングくらいなら、奏さんも嫌じゃないかなと思ってね。派手にせず、家族で食事をして、写真をきちんと残すくらい」

それは確かに、私の好みに近い。

だからこそ危ない。

このまま話に乗れば、今日中に日程まで決められかねない。

私はテーブルの上の婚姻届を見つめ、一度ゆっくり息を吸った。

「結婚しないって意味じゃありません」

その一言で、部屋が静かになった。

陸斗さんまで私を見る。
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