薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
胸が少しだけ速くなる。

それでも、この言葉だけは誰かに言わされるのではなく、自分の口から伝えたかった。

「陸斗さんとは……結婚します」

一瞬、陸斗さんの表情が止まった。

「奏」

「結婚します。でも、妊娠したからでも、皆さんに言われたからでもありません。私が陸斗さんと結婚したいと思ったからです」

自分の口から言った途端、少し恥ずかしくなった。

けれど、もう言葉を引っ込めたいとは思わなかった。

北海道まで逃げて、あれだけ騒ぎを起こして、それでも私は東京へ戻ってきた。

そして今、自分でこの人との未来を選んでいる。

「ただし、婚姻届をいつ出すのか、式をどうするのか、これから何処で暮らすのかは、全部二人で決めます。事件そのものは一区切りついても、その後のことはまだ残っていますし、私は妊娠していると分かったばかりです。だから、今ここで勢いだけで決めたくありません」

しばらく誰も口を挟まなかった。

やがて茂樹先生が穏やかに笑う。

「それでいいと思うよ」

「……いいんですか?」

「もちろん。婚姻届を勝手に用意するのは僕の自由だけど、いつ出すかを決めるのは二人だからね」

「用意するところも大分勝手ですけど」

「それは認める」

素直に認められると、それ以上何も言えない。

私は改めて陸斗さんを見る。

「陸斗さんも、それでいいですか?」

「はい」

思ったよりずっと早い返事だった。

「本当に?」

「奏が自分で結婚すると言ってくれたので、それだけで十分です。婚姻届は、奏と一緒に出します」

胸の奥が、また少しだけ温かくなる。

すると大雅さんが、陸斗さんの顔をじっと見た。

「兄貴、泣くなよ」

「泣いてません」

「目、赤いぞ」

「寝不足です」

征さんがここにいたら、間違いなく頷いただろう。

私は笑いそうになりながら、婚姻届を丁寧に折らず、そのまま持ち帰れるよう脇へ置いた。
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