薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
廊下へ出ると、私の部屋と陸斗さんの部屋、二つの扉が並んでいる。

ほんの少し前までなら、それぞれ自分の部屋へ戻るだけだった。

でも今日は、何となくそのまま別れる気になれなかった。

「……どっち行きます?」

私が聞くと、陸斗さんが少し考えた。

「奏の部屋」

「何で?」

「奏の方が落ち着くでしょう」

「陸斗さんの部屋でも別に」

「俺が落ち着きません。奏が帰ってきた感じがしないので」

相変わらず意味が分からない。

それでも疲れていたので、反論する気力もなく、「じゃあ、うちで」と答えて扉を開けた。

部屋の中は、北海道へ行く前と何も変わっていなかった。

たった数日しか離れていないはずなのに、随分長い時間ここを空けていたような気がする。

荷物を置き、ソファへ腰を下ろした瞬間、全身から力が抜けた。

「……疲れました」

「俺もです」

「陸斗さんが言うんですか?」

「今日は言わせてください」

「昨日倒れましたもんね」

「それはもう忘れてください」

「無理です」

陸斗さんも隣へ座り、しばらく二人とも何も言わなかった。

北海道へ行って、妊娠していると分かり、さらに三つ子だと告げられ、逃げて、追いかけられて、東京へ戻ってきた。

そして今日、家族には妊娠していることだけを伝え、自分の口で陸斗さんと結婚すると言った。

頭の中には考えなければならないことが山ほどある。

病院のことも、仕事のことも、婚姻届も、家も、お腹の中にいる三人のことも、これから順番に考えていかなければならない。

でも、今夜すべての答えを出す必要はない。

「奏」

「はい」

「今日はもう、何も考えずに休みませんか」

少し意外な言葉に、私は隣を見た。

「陸斗さんが、そんなこと言うんですね」

「何ですか、その反応」

「だって珍しいから。今から病院を調べて、仕事の予定を確認して、住むところまで決め始めるのかと思ってました」

「……正直、やろうとは思いました」

「やっぱり」

「でも、やめます」

陸斗さんは少しだけ苦笑した。

「今日は二人とも疲れていますし、まともな判断ができる状態じゃありません。病院も仕事も、これからの生活も、明日から一つずつ考えましょう」

私はその横顔をしばらく見つめた。

以前なら、この人は自分が心配だからという理由で、私の知らないうちに全部先回りしていたかもしれない。

それを嫌だと思ったからこそ、私は妊娠が分かった時に逃げた。

その陸斗さんが、今は自分から「一緒に考える」と言っている。

「……三人のことも?」

小さな声で聞く。

「はい」

「家族にいつ言うかも?」

「それも奏と決めます」

「仕事のことも、病院のことも?」

「もちろんです」

少しだけ胸の奥が温かくなる。

「本当に?」

「全部、奏と一緒に決めます。ただし、何かあったら必ず俺に言ってください」

「……はい」

「逃げる前に」

「そこはもういいじゃないですか」

「良くないです」

「もう北海道まで行きませんよ」

「北海道以外なら行くんですか?」

「そういう意味じゃありません!」

「じゃあ、何処にも行かないでください」

「仕事にも?」

「それは困ります」

「でしょう?」

ようやく少し笑えた。
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