薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「神宮寺さん」

陸斗さんに呼ばれて、顔を上げる。

「はい」

「座ってください」

「……はい」

椅子へ向かいながら、もう一度ホワイトボードを見る。

ほんの数時間前まで、私はただ男運が悪くて、会社が潰れて、お金まで失っただけの、ついていない人生なのだと思っていた。

それなのに今、その人生が法律事務所のホワイトボードいっぱいに広げられている。

「……私が帰ってる間に、一体何があったんですか?」

茂樹先生がゆっくりと私を見る。

さっきまでの柔らかな笑顔はなかった。

「奏さん。まず、分かったことから話そう」

私は椅子へ腰を下ろしたものの、どうしても正面のホワイトボードへ目がいく。

その中央には私の名前があり、そこから両親、未來、三人の元彼、坂上幹司、馬淵信治郎へと何本もの線が伸びていた。

ほんの少し前まで、私の中では全部別々の出来事だった。

それが今では、まるで最初から何かで繋がっていたみたいに、一枚の板の上へ並んでいる。

「……何か、見つかったんですか?」

自分で聞いたのに、答えを聞くのが少し怖かった。

「見つかった、という言い方はまだ早いですね」

征さんがパソコンから顔を上げた。

「現時点では、確認できた事実と、新たに確認が必要になった事項が増えた段階です」

「増えた……」

嫌な増え方。

征さんが画面をこちらへ少し向ける。

会社名、設立年月日、役員、所在地。

見慣れない文字や数字が、いくつも並んでいた。

「まず、坂上幹司です。神宮寺さんのお話どおり、ご両親が亡くなった後の時期に弁護士として活動していたことは確認できました。ただ、その後は弁護士業から離れています」

「……辞めたんですか?」

「はい」

知らなかった。

両親のことが一段落してから、坂上さんと連絡を取る理由もなくなったし、私の中ではすべて終わったことだったから。

「その後、企業コンサルティングを主な事業とする法人を立ち上げています」

「コンサル……」

「ここまでなら、それ自体が不自然というわけではありません」

陸斗さんが口を挟む。

「弁護士を辞め、別の仕事へ移ることはあります」

「じゃあ……何が?」

征さんが別の資料を表示する。

「坂上幹司がその後関係した法人と、坂梨未來さんの現在の勤務先や関連先との間に、いくつか接点があります」

「……未來?」

思わずホワイトボードへ目を向ける。

坂上幹司。

坂梨未來。

二つの名前。

「二人、知り合いだったってことですか?」

「そこも含めて確認中です」

< 29 / 152 >

この作品をシェア

pagetop