薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「それで、これが私を呼び戻した理由ですか?」

少し身を乗り出して尋ねる。

「半分です」

「……半分?」

まだあるの?

嫌な予感しかしない。

「もう半分は、あなた自身です」

「私?」

「現在、一人暮らしですね」

「はい」

「固定の勤務先はない」

「アルバイトはしてます」

「複数?」

「日によって違いますけど」

「帰宅時間も一定ではない」

「……まあ」

何か、また始まった。

さっき終わったはずの取り調べ。

「坂梨未來さんとは、現在も連絡を取っていますか?」

「私からは取ってません」

「向こうからは?」

「……たまに来ます」

陸斗さんの眉が、わずかに動いた。

「それは先ほど聞いていません」

「聞かれてませんから」

「……」

一瞬、黙った。

勝った。

たぶん、初めて。

後ろで純さんが、ぶっと吹き出した。

「陸斗、一本取られた」

「純さん」

「聞こえるように言ったの」

私は、ちょっとだけ気分がよくなった。

でも、それも一瞬だった。

「見せてもらえますか」

「何をです?」

「坂梨未來さんからの連絡です」

「……今?」

「はい」

やっぱり勝ってなかった。

仕方なくスマートフォンを取り出し、未來とのトーク画面を開く。

最後に届いたのは三日前。

『最近どうしてる?』

その少し前には、『仕事、決まった?』

さらに前には、『ちゃんと食べてる?』

文字だけ見れば、ごく普通だった。

昔からの友達が、仕事を失った私を心配している。それだけに見える。

なのに、今日ここまで話したあとで見ると、なぜか少し気持ちが悪かった。

「返信は?」

「最近はしてません」

「既読には?」

「してます」

「ブロックは?」

「してません」

「なぜ?」

また、なぜ。

「陸斗」

鈴子さんが横から呆れた声を出した。

「尋問しないの」

「確認です」

「顔が尋問なのよ」

「顔は関係ありません」

聖子さんが、ぼそっと言う。

「顔はいいのよね」

「聖子さん」

「何?」

「今、必要ですか。それ」

「別に」

……この人たち、本当に自由。

「神宮寺さん」

「はい」

「ブロックしていない理由を」

「……まだ、分からないからです」

「何が?」

「未來が、本当に私に何かしてるのか」

口にすると、少しだけ胸が痛んだ。

高校からずっとそばにいた。

私は友達だと思っていたし、一番近い人だと思っていた。

「もし全部、私の考えすぎだったらって思うと……今までの全部を疑って、そのまま切るのも、まだできなくて」

しばらく誰も何も言わなかった。

「分かりました」

陸斗さんは、それ以上何も言わなかった。

責めもしない。

ブロックしろとも言わない。

ただ、事実として受け取った。

< 31 / 152 >

この作品をシェア

pagetop