薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
その横から、鈴子さんが私を見る。

「奏ちゃん」

「はい」

「ロト7のことは?」

「え?」

「十二億円当たったこと。誰かに話した?」

一瞬考える。

「銀行の人と……ここの皆さんだけです」

「未來ちゃんには?」

「言ってません」

「昔の彼氏にも?」

「言うわけないです」

「SNSは?」

「載せませんよ!」

さすがに、そこまで馬鹿じゃない。

すると鈴子さんが、ほっと息を吐いた。

「ならいいわ」

「そんなに重要ですか?」

「重要よ」

答えたのは純さんだった。

「めちゃくちゃ重要」

「……何で?」

「十二億円よ?」

すごい勢いで身を乗り出される。

「十二万円じゃないのよ。十二億!」

「分かってます」

まだ実感はないけど。

「二十六歳、一人暮らし、独身、十二億円。情報が漏れたら、今までどこにいたのってくらい、わけの分からない人間が寄ってくる可能性だってあるんだから」

「……そんなに?」

「ある!」

「純さん」

愛梨さんが静かに止める。

「怖がらせすぎです」

「でも本当じゃない」

「可能性の話として説明してください」

「はいはい」

鈴子さんも、今度は真面目な顔で頷いた。

「過去の件と、十二億円の件は別よ」

「別?」

「そう。でも、どちらも奏ちゃんの安全を考えた方がいい理由にはなる」

安全。

その言葉が、急に現実味を持った。

「……私、そんなに危ないんですか?」

「現時点で、差し迫った危険が確認されているわけではありません」

陸斗さんが答える。

「じゃあ」

「念のためです」

電話でも聞いた言葉。

念のため。

「何かあってからでは遅い」

茂樹先生が続ける。

「今の段階でできることだけ、考えておこうという話だよ」

「……はい」

「だから!」

純さんが勢いよく言った。

「早く確保した方がいいって!」

「……」

今、何て?

「確保?」

私が聞き返した途端、何人かが目を逸らした。

「……私、何か捕まるんですか?」

「違います」

陸斗さんが即答した。

「じゃあ、確保って」

「純さんの言葉の選び方が悪いだけです」

「えー」

「えー、ではありません」

純さんを見ると、珍しく少しだけ慌てていた。

「いや、その……保護っていうか、安全なところに置いとくっていうか」

「置いとく?」

「純さん」

愛梨さんがため息を吐く。

「さらに悪化しています」

「じゃあ愛梨ちゃん説明してよ!」

「本人の意思を確認したうえで、安全性の高い生活環境を提案する、です」

「それ!」

純さんが私を指す。

「それを言いたかった!」

絶対違う。

でも、思わず笑ってしまった。

「……私、確保されるんですか?」

「されません」

陸斗さんが即答する。

「少なくとも勝手には」

「少なくとも?」

「本人の同意なしに、生活を変えることはできません」

「そこは安心してください」

愛梨さんが補足してくれた。

「全部、提案です」

提案。

その言葉に、少しだけ肩の力が抜ける。

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