薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
すると鈴子さんが、待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「じゃあ、提案していい?」
陸斗さんの眉間に、分かりやすく皺が寄る。
「母さん」
「何よ」
「その顔をやめてください」
「どんな顔よ」
「勝手に決めた時の顔です」
「決めてないわよ」
「今から決めようとしているでしょう」
「提案するだけ!」
「なら簡潔にしてください」
「ほんっと可愛くないわねぇ」
そう言ってから、鈴子さんは私へ向き直った。
満面の笑顔。
やっぱり嫌な予感がする。
「奏ちゃん、お引っ越ししない?」
「…………はい?」
何で、そうなる。
「一時的によ」
「どこにですか?」
鈴子さんが上を指差した。
「上」
つられて天井を見る。
「……上?」
「このビルの上」
「ここって、法律事務所ですよね?」
「そうよ」
「上に住めるんですか?」
「住居区画があるの」
初耳。
「このビルね、澤登家の所有なの」
「……え?」
今度は茂樹先生を見る。
茂樹先生が穏やかに笑った。
「そうなんだ」
さらっと言うんですね。
「上階の一部が住居になっていて、今ちょうど空いている部屋があります」
愛梨さんが説明してくれる。
「セキュリティもしっかりしていますし、何かあればすぐ下が事務所です」
なるほど。
そこまでは分かる。
「それに」
鈴子さんが楽しそうに続けた。
「隣には陸斗が住んでるから」
「…………」
私はゆっくり陸斗さんを見る。
「……隣?」
「母さん」
ものすごく嫌そうな声。
「そこを強調する必要はありません」
「大事じゃない」
「何がですか」
「安全よ」
「他の説明だけで十分です」
いや。
私としては結構大事な情報だけど。
「澤登先生、ここに住んでるんですか?」
「上階です」
「……へえ」
意外。
もっと超高層マンションとかに住んでそう。
「何ですか」
「いえ」
「何か言いたそうですが」
「何でもないです」
言わない。
絶対。
「部屋については、一時避難先の候補です。必ず移ってくださいという話ではありません」
陸斗さんが話を戻す。
「見てから断っても構いません」
「……見るだけでも?」
「もちろんです」
それなら、少し興味はある。