薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――

第五話 ――お隣さんは、容赦のない敏腕弁護士――

「じゃあ、行きましょう!」

私が「まず、お部屋だけ見せてもらってもいいですか?」と答えた途端、鈴子さんが誰よりも早く立ち上がった。

……何で、この人が一番嬉しそうなんだろう。

「母さん」

案の定、陸斗さんの低い声が飛ぶ。

「何よ」

「見るだけです」

「分かってるわよ」

「本当に?」

「失礼ね!」

今日会ったばかりの私でさえ、陸斗さんがいちいち念を押したくなる理由が、少しずつ分かってきた気がする。

「鍵の確認、取れたよ」

そこへ、スマートフォンを片手に茂樹先生が戻ってきた。

「管理をお願いしているところにも連絡した。今から見ても問題ないって」

「じゃあ決まりね」

「だから、見るだけです」

「細かいわねぇ」

「母さんが大雑把すぎるんです」

この親子、顔立ちはよく見ると少し似ているのに、性格はまるで違う。

……いや。

違って見えるだけなのかもしれないけれど。



私は鈴子さん、茂樹先生、陸斗さんと一緒にエレベーターへ向かった。

この建物は、一階がカフェ、二階と三階が澤登法律事務所。四階には資料などを保管する倉庫や、スタッフが使える仮眠室があり、五階から七階までは一般の賃貸住宅になっているらしい。

そして、八階から上は少し特殊な住居区画。

外から見た時は、本当にごく普通のビルだと思っていた。

法律事務所が入っていて、一階にはカフェがあり、その上には住居もある。その程度にしか見えなかったのに。

「……これ、普通のエレベーターじゃないんですか?」

乗り込んだところで、陸斗さんが専用のキーを認証させたのを見て、思わず尋ねた。

「エレベーター自体は普通です」

「じゃあ、その鍵は?」

「八階から十階へ上がるためのものです」

「……八階から?」

「はい」

操作盤を見ると、五階、六階、七階までは普通に押せるのに、八階から上は専用キーを認証しなければ反応しないらしい。

「じゃあ、八階から急に別世界になるんですか?」

茂樹先生が笑った。

「まあ、そんな感じかな。八階から上だけ少し特殊なんだ」

「特殊……」

「行けば分かるわよ」

鈴子さんが楽しそうに言う。

この人がそう言うと、なぜか余計に不安になる。

エレベーターが上昇し、階数表示の数字が一つずつ変わっていく。

それを眺めながら、私は改めて今日一日を思い返した。

朝、私はロト7で約十二億円を手にした。

その足で、何となく目に留まった法律事務所へ入り、数時間後の今、その法律事務所の所長夫妻と担当弁護士と一緒に、同じビルの上階にある部屋を見に行っている。

……何、この展開。

「神宮寺さん」

「はい?」

「さっきから階数表示を睨んでいますが」

「睨んでません」

「では?」

「今日一日が濃すぎるなって思ってただけです」

「あら」

鈴子さんが楽しそうに笑う。

「まだこれからよ」

「母さん」

「何よ」

「余計なことを言わないでください」

……まだ何かあるの?

聞く前に、エレベーターが八階へ到着した。

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