薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
第五話 ――お隣さんは、容赦のない敏腕弁護士――
「じゃあ、行きましょう!」
私が「まず、お部屋だけ見せてもらってもいいですか?」と答えた途端、鈴子さんが誰よりも早く立ち上がった。
……何で、この人が一番嬉しそうなんだろう。
「母さん」
案の定、陸斗さんの低い声が飛ぶ。
「何よ」
「見るだけです」
「分かってるわよ」
「本当に?」
「失礼ね!」
今日会ったばかりの私でさえ、陸斗さんがいちいち念を押したくなる理由が、少しずつ分かってきた気がする。
「鍵の確認、取れたよ」
そこへ、スマートフォンを片手に茂樹先生が戻ってきた。
「管理をお願いしているところにも連絡した。今から見ても問題ないって」
「じゃあ決まりね」
「だから、見るだけです」
「細かいわねぇ」
「母さんが大雑把すぎるんです」
この親子、顔立ちはよく見ると少し似ているのに、性格はまるで違う。
……いや。
違って見えるだけなのかもしれないけれど。
◇
私は鈴子さん、茂樹先生、陸斗さんと一緒にエレベーターへ向かった。
この建物は、一階がカフェ、二階と三階が澤登法律事務所。四階には資料などを保管する倉庫や、スタッフが使える仮眠室があり、五階から七階までは一般の賃貸住宅になっているらしい。
そして、八階から上は少し特殊な住居区画。
外から見た時は、本当にごく普通のビルだと思っていた。
法律事務所が入っていて、一階にはカフェがあり、その上には住居もある。その程度にしか見えなかったのに。
「……これ、普通のエレベーターじゃないんですか?」
乗り込んだところで、陸斗さんが専用のキーを認証させたのを見て、思わず尋ねた。
「エレベーター自体は普通です」
「じゃあ、その鍵は?」
「八階から十階へ上がるためのものです」
「……八階から?」
「はい」
操作盤を見ると、五階、六階、七階までは普通に押せるのに、八階から上は専用キーを認証しなければ反応しないらしい。
「じゃあ、八階から急に別世界になるんですか?」
茂樹先生が笑った。
「まあ、そんな感じかな。八階から上だけ少し特殊なんだ」
「特殊……」
「行けば分かるわよ」
鈴子さんが楽しそうに言う。
この人がそう言うと、なぜか余計に不安になる。
エレベーターが上昇し、階数表示の数字が一つずつ変わっていく。
それを眺めながら、私は改めて今日一日を思い返した。
朝、私はロト7で約十二億円を手にした。
その足で、何となく目に留まった法律事務所へ入り、数時間後の今、その法律事務所の所長夫妻と担当弁護士と一緒に、同じビルの上階にある部屋を見に行っている。
……何、この展開。
「神宮寺さん」
「はい?」
「さっきから階数表示を睨んでいますが」
「睨んでません」
「では?」
「今日一日が濃すぎるなって思ってただけです」
「あら」
鈴子さんが楽しそうに笑う。
「まだこれからよ」
「母さん」
「何よ」
「余計なことを言わないでください」
……まだ何かあるの?
聞く前に、エレベーターが八階へ到着した。
私が「まず、お部屋だけ見せてもらってもいいですか?」と答えた途端、鈴子さんが誰よりも早く立ち上がった。
……何で、この人が一番嬉しそうなんだろう。
「母さん」
案の定、陸斗さんの低い声が飛ぶ。
「何よ」
「見るだけです」
「分かってるわよ」
「本当に?」
「失礼ね!」
今日会ったばかりの私でさえ、陸斗さんがいちいち念を押したくなる理由が、少しずつ分かってきた気がする。
「鍵の確認、取れたよ」
そこへ、スマートフォンを片手に茂樹先生が戻ってきた。
「管理をお願いしているところにも連絡した。今から見ても問題ないって」
「じゃあ決まりね」
「だから、見るだけです」
「細かいわねぇ」
「母さんが大雑把すぎるんです」
この親子、顔立ちはよく見ると少し似ているのに、性格はまるで違う。
……いや。
違って見えるだけなのかもしれないけれど。
◇
私は鈴子さん、茂樹先生、陸斗さんと一緒にエレベーターへ向かった。
この建物は、一階がカフェ、二階と三階が澤登法律事務所。四階には資料などを保管する倉庫や、スタッフが使える仮眠室があり、五階から七階までは一般の賃貸住宅になっているらしい。
そして、八階から上は少し特殊な住居区画。
外から見た時は、本当にごく普通のビルだと思っていた。
法律事務所が入っていて、一階にはカフェがあり、その上には住居もある。その程度にしか見えなかったのに。
「……これ、普通のエレベーターじゃないんですか?」
乗り込んだところで、陸斗さんが専用のキーを認証させたのを見て、思わず尋ねた。
「エレベーター自体は普通です」
「じゃあ、その鍵は?」
「八階から十階へ上がるためのものです」
「……八階から?」
「はい」
操作盤を見ると、五階、六階、七階までは普通に押せるのに、八階から上は専用キーを認証しなければ反応しないらしい。
「じゃあ、八階から急に別世界になるんですか?」
茂樹先生が笑った。
「まあ、そんな感じかな。八階から上だけ少し特殊なんだ」
「特殊……」
「行けば分かるわよ」
鈴子さんが楽しそうに言う。
この人がそう言うと、なぜか余計に不安になる。
エレベーターが上昇し、階数表示の数字が一つずつ変わっていく。
それを眺めながら、私は改めて今日一日を思い返した。
朝、私はロト7で約十二億円を手にした。
その足で、何となく目に留まった法律事務所へ入り、数時間後の今、その法律事務所の所長夫妻と担当弁護士と一緒に、同じビルの上階にある部屋を見に行っている。
……何、この展開。
「神宮寺さん」
「はい?」
「さっきから階数表示を睨んでいますが」
「睨んでません」
「では?」
「今日一日が濃すぎるなって思ってただけです」
「あら」
鈴子さんが楽しそうに笑う。
「まだこれからよ」
「母さん」
「何よ」
「余計なことを言わないでください」
……まだ何かあるの?
聞く前に、エレベーターが八階へ到着した。