薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
扉が開く。
けれど、目の前に部屋の玄関があるわけではなかった。
「……え?」
エレベーターホールの先に、もう一枚扉がある。
落ち着いた内装に馴染むよう設計されているものの、明らかに普通の共用扉ではない。
陸斗さんが再びキーを認証させると、短い電子音とともにロックが解除された。
「ここも?」
「ここもです」
扉の向こうへ入ったところで、私は思わず振り返った。
「二重なんですね」
「はい」
八階の廊下は、下の法律事務所とも一般的なマンションとも、少し雰囲気が違っていた。
落ち着いた壁面に、足音が響きにくい床。照明も派手ではないのに、全体的にどこか上質で、外から見た普通の都市型ビルの中とは思えない。
「配達の人とかは、どうするんですか?」
「一階で一度問い合わせます。居住者側が確認して許可した場合のみ上がれますが、八階から上はこの扉を通る時にも、もう一度確認が必要です」
「じゃあ、知らない人が突然部屋の前まで来ることは?」
「基本的にありません」
即答だった。
「……厳重ですね」
そう呟くと、陸斗さんの声がほんの少しだけ落ち着いたものに変わった。
「父も母も、仕事柄、いつ何が起きるか分かりませんから」
「あ……」
茂樹先生は弁護士。
そして鈴子さんは元裁判官。
考えてみれば、二人がこれまで関わってきた相手が、全員穏やかな人だったとは限らない。
訴訟や判決、時には犯罪にも関わり、人の人生を大きく左右する仕事を長く続けてきた人たちだ。
「過剰に豪華にしたかったわけではありません。安全を優先した結果です」
陸斗さんの説明を聞きながら、私はもう一度、閉まったばかりの扉を見た。
外から見ると普通なのに、中へ入れば、見えないところほどきちんと守られている。
何となく、この家族そのものみたいだと思った。
「ちなみに」
鈴子さんが言う。
「九階は聖子の家よ」
「……え?」
今、さらっと聞き捨てならないことを言わなかった?
「聖子さん?」
「そう。九階は聖子たちが使ってるの」
「じゃあ……十階は?」
「私と茂樹さん」
私は、ゆっくりと天井を見上げた。
八階、九階、十階。
「……私、ここに住んだら、完全に澤登家と友田家に囲まれません?」
一瞬置いて、茂樹先生が吹き出した。
鈴子さんは、なぜか嬉しそうだ。
「安全でしょう?」
「その言葉、便利に使ってません?」
「本当に安全なのよ」
その横で、陸斗さんだけは真顔だった。
「八階は二戸だけです」
「二戸?」
「はい」
少し進むと、廊下にはゆったりと距離を取って、二つの玄関が並んでいた。
「こっち」
茂樹先生が、そのうち一つの前で止まる。
鍵が開いた。
「どうぞ」
「お邪魔します……って」
足を踏み入れたところで、私は止まった。
「今、誰も住んでないんですよね?」
「今はね」
けれど、目の前に部屋の玄関があるわけではなかった。
「……え?」
エレベーターホールの先に、もう一枚扉がある。
落ち着いた内装に馴染むよう設計されているものの、明らかに普通の共用扉ではない。
陸斗さんが再びキーを認証させると、短い電子音とともにロックが解除された。
「ここも?」
「ここもです」
扉の向こうへ入ったところで、私は思わず振り返った。
「二重なんですね」
「はい」
八階の廊下は、下の法律事務所とも一般的なマンションとも、少し雰囲気が違っていた。
落ち着いた壁面に、足音が響きにくい床。照明も派手ではないのに、全体的にどこか上質で、外から見た普通の都市型ビルの中とは思えない。
「配達の人とかは、どうするんですか?」
「一階で一度問い合わせます。居住者側が確認して許可した場合のみ上がれますが、八階から上はこの扉を通る時にも、もう一度確認が必要です」
「じゃあ、知らない人が突然部屋の前まで来ることは?」
「基本的にありません」
即答だった。
「……厳重ですね」
そう呟くと、陸斗さんの声がほんの少しだけ落ち着いたものに変わった。
「父も母も、仕事柄、いつ何が起きるか分かりませんから」
「あ……」
茂樹先生は弁護士。
そして鈴子さんは元裁判官。
考えてみれば、二人がこれまで関わってきた相手が、全員穏やかな人だったとは限らない。
訴訟や判決、時には犯罪にも関わり、人の人生を大きく左右する仕事を長く続けてきた人たちだ。
「過剰に豪華にしたかったわけではありません。安全を優先した結果です」
陸斗さんの説明を聞きながら、私はもう一度、閉まったばかりの扉を見た。
外から見ると普通なのに、中へ入れば、見えないところほどきちんと守られている。
何となく、この家族そのものみたいだと思った。
「ちなみに」
鈴子さんが言う。
「九階は聖子の家よ」
「……え?」
今、さらっと聞き捨てならないことを言わなかった?
「聖子さん?」
「そう。九階は聖子たちが使ってるの」
「じゃあ……十階は?」
「私と茂樹さん」
私は、ゆっくりと天井を見上げた。
八階、九階、十階。
「……私、ここに住んだら、完全に澤登家と友田家に囲まれません?」
一瞬置いて、茂樹先生が吹き出した。
鈴子さんは、なぜか嬉しそうだ。
「安全でしょう?」
「その言葉、便利に使ってません?」
「本当に安全なのよ」
その横で、陸斗さんだけは真顔だった。
「八階は二戸だけです」
「二戸?」
「はい」
少し進むと、廊下にはゆったりと距離を取って、二つの玄関が並んでいた。
「こっち」
茂樹先生が、そのうち一つの前で止まる。
鍵が開いた。
「どうぞ」
「お邪魔します……って」
足を踏み入れたところで、私は止まった。
「今、誰も住んでないんですよね?」
「今はね」