薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
一通り部屋を見終えて玄関へ戻ったところで、ふと、あることを思い出した。

「そういえば、澤登先生の部屋って?」

聞いた瞬間。

陸斗さんが、分かりやすく嫌そうな顔をした。

何。

「奏ちゃん、気になる?」

鈴子さんがすぐに食いつく。

「安全面で隣って聞いたからですよ!」

「ほら、こっち」

鈴子さんが先に廊下へ出る。

「母さん」

完全に無視。

私もつられて外へ出ると、鈴子さんがもう一つの扉を指差した。

「ここ」

今見ていた部屋の、すぐ隣。

本当に隣だった。

「……近っ」

思わず口から出た。

「だから隣だと言ったでしょう」

「聞きましたけど!」

「なら何が問題です?」

「もっとこう……間に少しくらい何かあると思うじゃないですか」

「隣という日本語の意味を知っていますか?」

「知ってますよ!」

腹立つ。

茂樹先生が笑いを堪えている。

「陸斗、もう少し普通に話せないのか?」

「普通です」

「それが普通なのよねぇ」

鈴子さんがため息を吐いた。

私は、二つ並んだ玄関を見比べた。

もしここへ住んだら、この扉の向こうに毎日この人がいる。

そう考えたところで、一つ気になった。

「ちなみに、壁、薄くないですよね?」

陸斗さんが完全に無表情になった。

茂樹先生がとうとう吹き出し、鈴子さんまで笑い始める。

「何で笑うんですか!」

「いや、ごめん」

「重要でしょう!」

「防音性能は、一般的な賃貸住宅より高めです」

陸斗さんだけが、真面目に答える。

「じゃあ、大丈夫ですね」

「何をするつもりです?」

「何もしませんよ!」

何でそうなる。

「先生こそ何するんですか」

言い返した瞬間。

二人とも黙った。

あれ。

私、何か変なこと言った?

「奏ちゃん」

鈴子さんの声が、妙に楽しそうだ。

「何です?」

「何でもなーい」

絶対、何かある。

「母さん」

「はいはい」

陸斗さんは小さく息を吐くと、すぐに真面目な顔へ戻った。

「部屋については、今日中に決める必要はありません。今の住居と比較してください。安全面はこちらでも確認します」

「分かりました」

「仕事の件も同じです。十二億円を手にしたからといって、急に人生全部を変える必要はありません」

少しだけ間を置いて、続ける。

「選べるようになった。それだけです」

その言葉が、妙に胸の奥へ落ちた。

選べる。

今まで、そんなふうに考えたことはなかった。

生活するため、生きるため、仕方なく選ぶことばかりだったけれど、これからは自分で選んでもいい。

「……そうですね」

小さく笑うと、陸斗さんの視線がほんの一瞬、私の顔に止まった。

また、あの感じ。

けれど何も言わないまま、「では、下へ戻りましょう」と、すぐにいつもの無表情へ戻った。

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