薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
それから、ホワイトボードの前に改めて全員が集まった。
私は何だか、とんでもない会議に参加しているような気分だった。
「さて」
茂樹先生が口を開く。
「ここからが一番大事な話だね」
「まだあるんですね」
「あるよ」
にこっと笑われた。
「奏さんが、これからどうしたいか」
「私が?」
「ああ」
茂樹先生はホワイトボードへ目を向けた。
「ご両親の事故、ご両親の会社と資産、坂上幹司。そして坂梨未來さんと、これまで関わった三人の男性。ここから先を本格的に調べるなら、正式に依頼を受けたい」
「正式に……」
「そうです」
陸斗さんが引き継ぐ。
「ここからは、単なる初回相談の範囲を超えます。どこまで確認するか、何を調べるか。結果によっては、民事上の手続きだけではなく、刑事事件としての対応も検討することになります」
急に、言葉が重くなった。
「ただ」
聖子さんが少し空気を柔らかくする。
「ここで働くって話は、それとはまた別だからね」
「はい」
「でも、もし神宮寺さんがこちらで勤務されて、同時に正式な調査も依頼されるのであれば、メリットはあります」
愛梨さんが続けた。
「メリット?」
「日常的に事務所へ来ることになりますから。調査で確認したいことが出るたびに電話やメールをして、お互いの予定を合わせる手間は少なくなります」
「ああ……」
征さんも頷いた。
「本人へ直接確認できるのは大きいです。神宮寺さん側も、何か思い出した時にすぐ共有できます」
「逐一、『陸斗先生、今いいですかー?』って電話しなくても、本人がそこにいるし」
純さんが身を乗り出す。
「純さん」
「何よ」
「俺は常に暇ではありません」
「知ってるわよ」
「そこにいるからいつでも、という説明は正確ではありません」
「細かい!」
大和さんが笑った。
「まあ、言いたい意味は分かるけどね」
「ですよね!」
純さんが勝ち誇る。
「仕事と調査依頼は別です」
大和さんが私を見る。
「ただ、同じ場所にいれば情報共有はしやすいし、何かあった時の確認も早い。それは確かです」
「ただし」
やっぱり陸斗さんは、そこを曖昧にはしなかった。
「ここで働くからといって、自動的にあなたの過去をこちらが調べるわけではありません。働くこと、調査を正式に依頼すること、そして先ほど見た部屋を利用すること。全部、別です」
はっきり分けられた。
仕事を受けるか。
部屋を使うか。
正式に調査を依頼するか。
いくつもの選択肢が目の前へ並ぶ。
私は皆を見回した。
「……皆さんは、どうするのが一番いいと思います?」
聞いていいのか少し迷ったけれど、結局そう尋ねた。
すると。
「神宮寺さん」
陸斗さん。
「奏さん」
茂樹先生。
「奏さん」
聖子さん。
「神宮寺さん」
愛梨さん。
「奏ちゃん」
純さん。
「奏ちゃん」
鈴子さん。
「神宮寺さん」
征さん。
「奏さん」
大和さん。
呼び方だけは、ばらばら。
なのに。
次の言葉だけは、信じられないくらい綺麗に重なった。
「決めるのは、あなたです」
「…………」
ハモった。
ものすごく綺麗に。
私は全員を見回した。
「……今の、練習しました?」
「していません」
陸斗さんが真顔で答える。
「嘘でしょう?」
「本当です」
純さんが盛大に笑い始めた。
「すご! もう一回やる?」
「やりません」
「陸斗、ノリ悪い」
「相談中です」
私まで笑ってしまった。
でも笑いながら、胸の奥が少しだけ熱くなった。
誰も、私の代わりに決めない。
十二億円を持っているからでも、危なそうだからでも、可哀想だからでもない。
そんな理由で、私の人生を勝手に動かそうとはしない。
――決めるのは、私。
私は何だか、とんでもない会議に参加しているような気分だった。
「さて」
茂樹先生が口を開く。
「ここからが一番大事な話だね」
「まだあるんですね」
「あるよ」
にこっと笑われた。
「奏さんが、これからどうしたいか」
「私が?」
「ああ」
茂樹先生はホワイトボードへ目を向けた。
「ご両親の事故、ご両親の会社と資産、坂上幹司。そして坂梨未來さんと、これまで関わった三人の男性。ここから先を本格的に調べるなら、正式に依頼を受けたい」
「正式に……」
「そうです」
陸斗さんが引き継ぐ。
「ここからは、単なる初回相談の範囲を超えます。どこまで確認するか、何を調べるか。結果によっては、民事上の手続きだけではなく、刑事事件としての対応も検討することになります」
急に、言葉が重くなった。
「ただ」
聖子さんが少し空気を柔らかくする。
「ここで働くって話は、それとはまた別だからね」
「はい」
「でも、もし神宮寺さんがこちらで勤務されて、同時に正式な調査も依頼されるのであれば、メリットはあります」
愛梨さんが続けた。
「メリット?」
「日常的に事務所へ来ることになりますから。調査で確認したいことが出るたびに電話やメールをして、お互いの予定を合わせる手間は少なくなります」
「ああ……」
征さんも頷いた。
「本人へ直接確認できるのは大きいです。神宮寺さん側も、何か思い出した時にすぐ共有できます」
「逐一、『陸斗先生、今いいですかー?』って電話しなくても、本人がそこにいるし」
純さんが身を乗り出す。
「純さん」
「何よ」
「俺は常に暇ではありません」
「知ってるわよ」
「そこにいるからいつでも、という説明は正確ではありません」
「細かい!」
大和さんが笑った。
「まあ、言いたい意味は分かるけどね」
「ですよね!」
純さんが勝ち誇る。
「仕事と調査依頼は別です」
大和さんが私を見る。
「ただ、同じ場所にいれば情報共有はしやすいし、何かあった時の確認も早い。それは確かです」
「ただし」
やっぱり陸斗さんは、そこを曖昧にはしなかった。
「ここで働くからといって、自動的にあなたの過去をこちらが調べるわけではありません。働くこと、調査を正式に依頼すること、そして先ほど見た部屋を利用すること。全部、別です」
はっきり分けられた。
仕事を受けるか。
部屋を使うか。
正式に調査を依頼するか。
いくつもの選択肢が目の前へ並ぶ。
私は皆を見回した。
「……皆さんは、どうするのが一番いいと思います?」
聞いていいのか少し迷ったけれど、結局そう尋ねた。
すると。
「神宮寺さん」
陸斗さん。
「奏さん」
茂樹先生。
「奏さん」
聖子さん。
「神宮寺さん」
愛梨さん。
「奏ちゃん」
純さん。
「奏ちゃん」
鈴子さん。
「神宮寺さん」
征さん。
「奏さん」
大和さん。
呼び方だけは、ばらばら。
なのに。
次の言葉だけは、信じられないくらい綺麗に重なった。
「決めるのは、あなたです」
「…………」
ハモった。
ものすごく綺麗に。
私は全員を見回した。
「……今の、練習しました?」
「していません」
陸斗さんが真顔で答える。
「嘘でしょう?」
「本当です」
純さんが盛大に笑い始めた。
「すご! もう一回やる?」
「やりません」
「陸斗、ノリ悪い」
「相談中です」
私まで笑ってしまった。
でも笑いながら、胸の奥が少しだけ熱くなった。
誰も、私の代わりに決めない。
十二億円を持っているからでも、危なそうだからでも、可哀想だからでもない。
そんな理由で、私の人生を勝手に動かそうとはしない。
――決めるのは、私。