薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
――その直後。

「よし!」

鈴子さんが勢いよく立ち上がった。

「じゃあ、早速お引っ越しよ!」

「…………はい?」

ちょっと待って。

「今すぐですか?」

「今すぐ!」

即答。

しかも満面の笑顔。

「善は急げよ!」

「母さん」

陸斗さんが眉間を押さえた。

「正式依頼を受けた話と、引っ越しは別です」

「でも安全の確保でしょう?」

「だからといって、今から家財道具を全部運ぶつもりですか」

「それくらい――」

「違う」

低い声が、ぴたりと鈴子さんを止めた。

大雅さんだった。

「今日やるのは引っ越しじゃない」

「違うの?」

「違う。今日は必要な物だけ取りに戻る」

そう言って、今度は私を見る。

「着替え、下着、薬、身分証、仕事に必要な物、充電器。通帳と印鑑。それから最低限の生活用品」

一つずつ、迷いなく挙げていく。

「それだけ?」

「まずはな。本格的に部屋を移すかは、後で決めればいい」

そこで一度言葉を切り、はっきりと言った。

「今夜からは、こっちで寝ろ」

「……今日から?」

「ああ」

即答だった。

「そこまで必要ですか?」

「必要だ。今まで何もなかったから、今日も何もないとは限らない。それに、こっちが本格的に調べ始めることも決まった」

さらに少し間を置く。

「相手が何も気づかなければ、それでいい。だが、念のため先に動く」

怖がらせるための話ではない。

でも、軽く考えてもいけない。

そのことだけは伝わった。

「今日やるのは引っ越しじゃない」

大雅さんが、もう一度はっきり言った。

「一時避難だ」

その言葉なら、少しだけ受け止めやすかった。

「正式にあの部屋へ住むかどうかは、明日以降、契約条件も含めて決めてください」

陸斗さんが続ける。

「仕事も同じです」

「……はい」

今日、全部決める必要はない。

でも、今夜どこで寝るかだけは、先に決めた方がいいらしい。

私は少し考え、頷いた。

「分かりました」

鈴子さんの顔が、ぱっと明るくなる。

「じゃあ決まり!」

「母さん」

「何よ」

「一時避難です」

「ほぼ一緒でしょう?」

「違います」

「細かい!」

また始まった。

思わず笑ってしまう。

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