薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
寝室の入口へ向かって声を掛ける。

「大雅さん」

すぐに大雅さんが来たが、寝室の中へは入らず、入口で止まった。

「どうした?」

「三段目の引き出しです。神宮寺さんが、下着の向きと下に敷いている布の位置が違うと。それと洗面所の化粧ポーチも、いつもとファスナーの位置が違うそうです」

大雅さんは引き出しへ視線を向けた。

「なくなってる物は?」

「今のところ、ないと思います」

「家にしかない物は?」

「この奥にあります。へその緒と母子手帳、ベビーリング。それから、両親の結婚指輪と、事故の時に最後につけていた腕時計です」

大雅さんの目がわずかに細くなった。

けれど、中へ入ることも、引き出しへ手を伸ばすこともしなかった。

「一旦、現状の写真を撮ってくれ。この部屋の中、全部。動かさずに。今の引き出しも、そのままの状態で」

「はい」

愛梨さんがスマートフォンを取り出した。

「ここから先、物に触るのは基本、神宮寺さんだけ」

「分かりました」

そこから愛梨さんが、玄関、廊下、リビング、キッチン、窓、カーテン、棚、洗面所、寝室と、部屋の状態を一つずつ写真に残していった。

私が違和感を覚えた三段目の引き出しも、何も動かさないまま撮影する。

私はその様子を横で見ていた。

自分の部屋なのに、触ってはいけないものが増えていく。

いつもなら何も考えず開けて、閉めて、適当に物を置いていた場所が、今は全部“そのままにしておくもの”になっていた。

まるで、自分の部屋が少しずつ、自分のものではなくなっていくようだった。

撮影には三十分ほどかかった。

一通り終わると、大雅さんがもう一度部屋を確認した。

「見た限り、こじ開けたような目立つ形跡はない」

「じゃあ……」

「だから安全、とはならない」

迷いのない声だった。

「合鍵かもしれない。他の方法かもしれない。本当に誰かが入ったかも、まだ断定できない。ただ、神宮寺さんが複数の場所で違和感を感じてる。それは無視しない方がいい」

背中が冷たくなる。

誰かが入った。

そう決まったわけではない。

でも、そうかもしれないと本気で考えなければならないところまで来ている。

私は三段目の引き出しへ目を向けた。

「……何か探してたんでしょうか」

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