薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「神宮寺さん」

大雅さんが言った。

「これからは、ここには戻らない」

「……え?」

「安全と判断できるまで」

思わず陸斗さんを見る。

陸斗さんも否定しなかった。

「必要なものを全部持ち出してください。当分ここへ戻らなくても困らない程度に」

「そこまでしないと駄目ですか?」

「した方がいいでしょう」

陸斗さんが答えた。

「自分しか触らない場所を、誰かに触られた可能性があるんです。今まで通りここで生活する理由はありません」

相変わらず、言い方に容赦がない。

でも今日は、その言葉に反論する気にはなれなかった。

安全ではない。

自分の家なのに。

昨日まで、一人で普通に眠っていた場所なのに。

私は小さく息を吐いた。

「……分かりました」

愛梨さんと二人で荷物をまとめた。

仕事に着ていける服。

部屋着。

下着。

洗面用品。

化粧品。

充電器。

当分ここへ戻らなくても困らない程度の物を選んでいく。

通帳はほとんどネットへ切り替えているし、身分証や印鑑など失くしたくない物は、普段からバッグの中のポーチへ入れて持ち歩いている。

誰も信用できない。

そう思うようになってから、いつの間にかそうする癖がついていた。

こんな時に役に立つなんて、少しも嬉しくないけれど。

荷物をまとめている途中、廊下から陸斗さんの声が聞こえた。

「征さん。神宮寺さん用に、別の端末と番号を一つお願いします」

思わず手が止まる。

別の端末?

何のためだろう。

聞こうかと思ったけれど、今は荷物をまとめる方が先だった。

愛梨さんと顔を見合わせ、そのまま作業を続ける。

二十分ほどで荷物はまとまった。

大雅さんと陸斗さんは、その間ずっと廊下側で待っていた。

玄関を開けると、二人がこちらを見る。

「終わりました」

「荷物は俺たちが運ぶ。神宮寺さんは戸締まり」

「はい」

私は最後に部屋の中を振り返った。

いつものリビング。

いつもの家具。

昨日まで、何の疑いもなく帰ってきた場所。

扉を閉める。

鍵を掛ける。

カチリ。

いつもの音だった。

それなのに、もう自分の家を閉めたような気がしなかった。

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