薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
何気なく画面へ目を落とした私は――息を止めた。

『今日、家にいないよね?』

指先が冷たくなった。

誰も何も言わない。

私も、すぐには声が出なかった。

未來には、今の住所を教えていない。

会社が倒産して、あの事件があって、一人で今の部屋へ引っ越してから、新しい住所は未來にも元彼たちにも知らせていない。

合鍵だって誰にも渡していないし、友達すら、この部屋へ入れたことはない。

それなのに。

どうして。

どうして未來は――私が今日、家にいないことを知っているの?

頭に浮かんだ。

三段目の引き出し。

向きの変わっていた下着。

ずれていた布。

いつもとは逆の位置にあった化粧ポーチのファスナー。

何も盗られていない。

何も壊されていない。

だからこそ、余計に怖い。

「神宮寺さん」

大雅さんの声に顔を上げた。

「今日は触るな。既読もつけるな。返すかどうかは明日決める」

「……はい」

大雅さんは時計を確認した。

「今日はここまで」

一時間。

本当に、それ以上続けるつもりはないらしい。

茂樹先生も頷いた。

「今夜はもう休みましょう。続きは明日です」

私も、小さく息を吐いた。

これ以上考えたところで、今夜答えが出ることなんて何もない。

今夜は、八階の部屋へ行く。

つい数時間前に見学したばかりの場所。

自分の家ではない部屋で、今日から眠ることになる。

テーブルには、未來からのメッセージが残ったスマートフォンと、まだほとんど何も入っていない新しい端末。

足元には、さっき自分の部屋から持ち出した荷物。

昨日までの日常が、ほんの一日で形を変えていた。

――誰かが、私の部屋にいた。

そして、もしかしたら。

今も、私を見ている。

その考えを消せないまま、私は荷物と新しいスマートフォンを持ち、今夜過ごす八階の部屋へ向かった。
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