薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
ダイニングテーブルへ戻ると、二台のスマートフォンが置かれていた。

今まで使っていた旧端末と、今日から使う新しい端末。

旧端末には、これまでのLINEや履歴をそのまま残している。

新しい端末には、今後必要になる情報だけを入れていく。

新しいLINEの登録は、まだほんの少しだった。

茂樹先生。

鈴子さん。

聖子さん。

愛梨さん。

征さん。

大和さん。

大雅さん。

そして、陸斗さん。

今朝まで一人も知らなかった人たちばかりだ。

反対に旧端末には、未來や元彼たち、昔の知人、仕事関係者がいる。

過去と今が、二台のスマートフォンに分かれて並んでいるみたいだった。

新しい番号を持ったからといって、過去が消えるわけではない。

でも、一つだけ朝とは違うことがある。

私は、両親のことを調べると決めた。

会社のことも、未來のことも、知らないまま終わらせるのではなく、自分で知りたいと言った。

これから何をしたいのかも、十二億円をどう使うのかもまだ分からない。

でもまずは、私が知らないまま生きてきた過去を知る。

今できるのは、それなのかもしれない。

そう考えていた時、新しいスマートフォンが短く震えた。

表示された名前は、陸斗さん。

『食事はしましたか』

しばらく画面を見たあと、私はゆっくり隣の壁へ視線を移した。

「……LINEする距離?」

本当に、すぐそこにいる。

少し迷ってから、

『今、食べ終わりました。聖子さんが用意してくれたもの、いただきました』

と送る。

すぐに既読がついた。

『そうですか』

「……それだけ?」

思わず画面に向かって言った。

でも、すぐにもう一通。

『必要な物は足りていますか』

「……続き、あった」

少し笑ってしまった。

『今日は大丈夫だと思います。足りないものがあったら明日買います』

『分かりました』

今度こそ終わりかと思ったら、

『旧端末は見ないでください』

「分かってますよ……」

『見てません』

と返す。

さらに、

『鍵は?』

「……子どもじゃないんですけど」

言いながら、本当に閉めたか心配になって玄関まで確認しに行った。

ちゃんと鍵は掛かっている。

『閉めました』

すぐに既読。

『なら大丈夫です』

そして少しして、

『今日はもう、何も考えず休んでください』

その一文で、指が止まった。

注意でも確認でもない。

今日はもう考えなくていい。

そう言われた気がした。

『……努力します』

すぐに、

『努力することではありません』

と返ってくる。

「……ですよね」

思わず笑った。

『おやすみなさい』

『おやすみなさい』

たったそれだけのやり取りだった。

でもスマートフォンを伏せた時、ずっと入っていた肩の力が、ほんの少しだけ抜けた。

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