薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
陸斗の指が止まる。

怖くないわけがない。

本人はなるべく普通にしているし、文句も言うし、こちらへ言い返す余裕もある。

でも、自宅の鍵を閉めた時の顔も、大雅が「帰るぞ」と言った時に一瞬だけ見せた戸惑いも、陸斗は見ていた。

帰るという言葉が、彼女にとってどこを指すのか。

たった一日で変わってしまった。

『怖くないわけはないでしょう』

そう送ると、聖子から、

『奏さん、あまり人に頼るの得意じゃなさそうだし』

と返ってきた。

その通りだと思った。

貴重品も印鑑も、基本的に持ち歩く。

理由を聞けば、

――誰も信用できないから。

奏は、それを特別なことのようには言わなかった。

彼女にとっては、それが普通なのだ。

大和。

『だから一気に囲みすぎない方がいい』

茂樹。

『本人が選べるようにしておくのが一番だね』

聖子。

『必要以上に構わない。でも必要な時は手を出す。それくらいね』

鈴子。

『分かってるわよ。でもご飯くらいは食べさせる』

すると大雅まで、

『飯は食わせろ』

と送ってきた。

鈴子。

『ほら!』

大雅。

『腹減った状態で判断力落ちる方が面倒だ』

理由まで大雅らしい。

陸斗は、ごく小さく笑った。

『今日はもう休ませます』

そう送ると、今度は大雅から、

『隣なんだから、何かあったら行け』

と届く。

『言われなくても』

返した直後。

大和。

『お』

鈴子。

『まあ』

聖子。

『へえ』

愛梨。

『……』

征。

『ノーコメントで』

陸斗は画面を見たまま黙った。

『何ですか』

鈴子。

『何でもないわよ』

大和。

『いや、絶対面白がってる』

大雅。

『くだらねぇ』

陸斗はスマートフォンをテーブルへ置いた。

もう相手にするのはやめよう。

けれど、ソファへ背を預けて目を閉じると、頭に浮かんだのは未來のLINEでも、十二億円でもなかった。

――何をしたらいいのか、分からないんです。

今日、奏が困ったような顔で言った言葉だった。

何もかも一度に抱え込んだ人間が、すぐ隣の部屋にいる。

そう思うと、何となく壁の向こうへ視線が向く。

今は、このくらいの距離でいい。

無理に部屋へ入る必要も、顔を合わせる必要もない。

ただ、困った時に連絡できる相手が近くにいる。

それだけ分かっていればいい。

少なくとも、彼女が自分から誰かを頼れるようになるまでは。

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