薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
私は、お風呂へ入り、いつもの部屋着に着替えて寝室へ向かった。
新しいシーツ。
新しい枕。
見慣れない天井。
設備は元の部屋よりずっといいし、広くて静かで、安全だと言われている。
何一つ不満なんてない。
それでもベッドへ横になると、すぐには眠れなかった。
今日一日の出来事が、順番も関係なく頭へ浮かんでくる。
十二億円。
両親。
会社。
未來。
自分の部屋。
ずれた布。
両親の時計。
そして、
『今日、家にいないよね?』
あのLINE。
「……何も考えず寝ろって、無理でしょう」
小さく呟いた。
返事はない。
当然だ。
でも、今までとは少し違う。
元の部屋で一人で眠る時は、怖くても困っても全部自分でどうにかするしかなかった。
誰かへ連絡するという発想さえ、ほとんどなかった。
でも今は、壁一枚向こうに陸斗さんがいる。
九階には聖子さん。
十階には茂樹先生と鈴子さん。
明日になれば、下には事務所の人たちがいる。
こんなに人に囲まれているのに、一人でベッドにいる。
なのに、今までの“一人”より少しだけ怖くなかった。
「……変なの」
今日会ったばかりなのに。
無愛想で、容赦がなくて、言い方も厳しい。
こちらが聞きたくないことまで平気な顔で聞く。
そのくせ、私が決めることだけは一度も勝手に決めなかった。
八階に住めとも、ここで働けとも、調査を依頼しろとも言わなかった。
決めるのは、私。
何度もそう言った。
あんなに冷たい人だと思ったのに、今は隣にいることを少し安心している。
「……もう寝よう」
十二億円の使い道も、これから何をしたいのかも、まだ分からない。
でも今すぐ全部決めなくてもいい。
明日になれば、また一つずつ考えればいい。
私は目を閉じた。
知らない部屋。
新しいスマートフォン。
新しい番号。
そして壁一枚向こうには、今日初めて会ったばかりの、容赦のない敏腕弁護士。
何もかも、今朝には想像すらしていなかった。
それでも少なくとも今夜は、ここなら眠ってもいい。
そんなふうに思えた。