薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「……」

あ。

やっぱり言ってなかった。

続けて、

『昨日、聞いていません』

と届く。

「……ですよね」

思わず一人で答えながら、

『すみません。言い忘れてました』

と送った。

しばらくして、今度は、

『何時にここを出る予定ですか』

と返ってくる。

“ここ”。

その文字を見て、ほんの少しだけほっとした。

もし“家を出る”と書かれていたら、今の私には少し引っかかっていた気がする。

昨日までなら、そんなこと気にも留めなかったはずなのに。

『11時くらいです』

送る。

返事は少し間を置いて届いた。

『分かりました。朝食の時に話しましょう』

「……何を?」

思わず眉を寄せた。

バイトへ行っていいのか。

それとも、今の状況では行かない方がいいのか。

たぶん、その話だろう。

十二億円があるのに、今日も普通に倉庫へ働きに行く。

この人たちは、それをどう思うんだろう。

でも私にとっては、昨日まで普通に入っていたシフトだ。

口座に十二億円が入ったからといって、昨日までの日常が全部なくなるわけではない。

「……とりあえず、支度しよう」

顔を洗って着替えたら、一階のカフェへ行く。

まずは朝ごはん。

そのあと今日の予定と、倉庫のバイトについて話す。

その先のことは、まだ全然分からない。

でも朝六時、新しい部屋で新しいスマートフォンを持ち、三人から同じようなメッセージが届いた。

それだけでも、昨日までとは何かが確実に変わり始めているのだと思う。

それがいいことなのか、悪いことなのかは、まだ分からない。

「……まず、ご飯」

私は小さく笑った。

母にも、きっとそう言われる。

――とにかく食べなさい。

だったら今は、それでいい。
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