薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――

第九話 ――いつも通りには、もう戻れない――

朝食を終えたあと、私たちはそのまま二階の澤登法律事務所へ上がった。

ほんの少し前まで、一階のToma’s Salamander Cafeでは鈴子さんの家事能力について散々盛り上がっていたのに、場所が変わるだけで空気も自然と切り替わる。

もっとも、昨日のような重苦しさはない。

今日、まず考えなければならないことは、はっきりしていた。

十二時から十八時まで入っている、倉庫のバイト。

昨日までなら時間になれば家を出て、そのまま普通に出勤していた。それだけのことだった。

けれど今日は、住んでいる場所そのものが変わり、自分の部屋へ誰かが入ったかもしれない状況で、これまでと同じように一人で動いていいのかも分からない。

席に着くと、陸斗さんが私を見る。

「神宮寺さんは、今日は出勤するつもりなんですね?」

「はい」

答えた途端、わずかに眉間へ皺が寄った。

「……何ですか、その顔」

「別に」

「絶対、別にじゃないですよね」

「行くなとは言ってません」

確かに、言ってはいない。

「今日、私が来る前提でシフトが組まれてると思うんです。急に休んだら、その分ほかの人に負担がかかりますし」

十二億円あるんだから、もう働かなくてもいい。

もしそう言われたら、たぶん私は困ったと思う。

お金があることと、今日入っている仕事を突然投げ出していいことは、私の中ではどうしても同じにならない。

茂樹先生も、向かいの席から静かに頷いた。

「仕事を続けるかどうかと、今日出勤するかどうかは分けて考えた方がいいでしょうね」

「はい」

「神宮寺さんが続けたいのであれば、こちらから辞めるように言う理由はありません。ただ、昨日のことがありますから、今までとまったく同じ動き方でいいかどうかは、一度確認した方がいいでしょう」

その言い方なら、私にも納得できた。

仕事を辞めろと言われているわけではない。

ただ、昨日までと同じではいけないかもしれない。その部分を確認するだけだ。

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