薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「まず、今日の勤務先ですが――」
陸斗さんが話し始めたところで、事務所の扉が開いた。
「コーヒーのおかわり、お持ちしました」
振り返ると、暢さんだった。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
朝食の時に言っていた通り、トレーに載せたカップを一つずつ置いていく。
それだけだと思っていた。
ところが全員分を配り終えた暢さんは、そのまま空いている椅子を引いて座った。
私は思わず、その様子を目で追う。
……帰らないんだ。
けれど、誰も不思議そうな顔をしていない。
陸斗さんも茂樹先生も、まるで最初から暢さんがここに加わる予定だったみたいな顔をしている。
「今日、仕事なんだって?」
暢さんが私を見る。
「はい。十二時から十八時までです」
「じゃあ、分かる範囲でいいから簡単に教えてもらえる?」
「何をですか?」
暢さんはメモ用紙を一枚取り、私の前へ滑らせた。
「勤務先。会社名は略さず正式名称で、どこの部門で何をしているのか。実際に働いている場所も教えてほしい」
「あ……はい」
私はペンを受け取った。
「アステルコマース株式会社、東京ベイ・フルフィルメントセンターです。品川区八潮の大井ふ頭側にあります。物流オペレーション部の出荷・梱包セクションです」
「シフトは固定? それとも希望を出す? 今日行ったら、次はいつ?」
思っていたより細かい。
答えようとしたところで、さらに続いた。
「ほかにも掛け持ちしてるなら、それも。会社名、場所、仕事内容、勤務時間、次の予定。口でまとめにくかったら、そこに書いてくれていいよ」
「……全部ですか?」
「今分かる範囲で大丈夫。これから先の予定まで完璧に出してって意味じゃないから」
そう言って、少しだけ首を傾げる。
「僕の言ってること、伝わってる?」
「伝わっては、います」
でも、何で暢さんが聞いてくるんだろう。
その疑問を口にするより先に、暢さんは陸斗さんへ顔を向けた。
「陸斗。新しい方、あれ入れといて」
陸斗さんが一瞬だけ考える。
「あれで分かると思います」
「分かるよね」
「分かりますけど、どっちも入れるんですか?」
「うーん……両方かな。一つは、必要な時にこっちでも位置を確認できる方。共有する人間は絞って」
「はい」
「もう一つは、外から端末に変なアクセスがあった時に防げる方。アプリだけじゃなくて、システム側も見られるようにして」
「分かりました」
今度は暢さんが征さんを見る。
「征」
「はい」
「そっちはセキュリティ上げといて。システム側とアプリ側、両方。何か変な動きがあったら僕にも分かるようにできる?」
「いけます」
「じゃあ、それでお願い」
会話が普通に成立している。
私はペンを持ったまま、暢さん、陸斗さん、征さんと順番に顔を見た。
途中から、何の話をしているのかほとんど分からない。
陸斗さんが話し始めたところで、事務所の扉が開いた。
「コーヒーのおかわり、お持ちしました」
振り返ると、暢さんだった。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
朝食の時に言っていた通り、トレーに載せたカップを一つずつ置いていく。
それだけだと思っていた。
ところが全員分を配り終えた暢さんは、そのまま空いている椅子を引いて座った。
私は思わず、その様子を目で追う。
……帰らないんだ。
けれど、誰も不思議そうな顔をしていない。
陸斗さんも茂樹先生も、まるで最初から暢さんがここに加わる予定だったみたいな顔をしている。
「今日、仕事なんだって?」
暢さんが私を見る。
「はい。十二時から十八時までです」
「じゃあ、分かる範囲でいいから簡単に教えてもらえる?」
「何をですか?」
暢さんはメモ用紙を一枚取り、私の前へ滑らせた。
「勤務先。会社名は略さず正式名称で、どこの部門で何をしているのか。実際に働いている場所も教えてほしい」
「あ……はい」
私はペンを受け取った。
「アステルコマース株式会社、東京ベイ・フルフィルメントセンターです。品川区八潮の大井ふ頭側にあります。物流オペレーション部の出荷・梱包セクションです」
「シフトは固定? それとも希望を出す? 今日行ったら、次はいつ?」
思っていたより細かい。
答えようとしたところで、さらに続いた。
「ほかにも掛け持ちしてるなら、それも。会社名、場所、仕事内容、勤務時間、次の予定。口でまとめにくかったら、そこに書いてくれていいよ」
「……全部ですか?」
「今分かる範囲で大丈夫。これから先の予定まで完璧に出してって意味じゃないから」
そう言って、少しだけ首を傾げる。
「僕の言ってること、伝わってる?」
「伝わっては、います」
でも、何で暢さんが聞いてくるんだろう。
その疑問を口にするより先に、暢さんは陸斗さんへ顔を向けた。
「陸斗。新しい方、あれ入れといて」
陸斗さんが一瞬だけ考える。
「あれで分かると思います」
「分かるよね」
「分かりますけど、どっちも入れるんですか?」
「うーん……両方かな。一つは、必要な時にこっちでも位置を確認できる方。共有する人間は絞って」
「はい」
「もう一つは、外から端末に変なアクセスがあった時に防げる方。アプリだけじゃなくて、システム側も見られるようにして」
「分かりました」
今度は暢さんが征さんを見る。
「征」
「はい」
「そっちはセキュリティ上げといて。システム側とアプリ側、両方。何か変な動きがあったら僕にも分かるようにできる?」
「いけます」
「じゃあ、それでお願い」
会話が普通に成立している。
私はペンを持ったまま、暢さん、陸斗さん、征さんと順番に顔を見た。
途中から、何の話をしているのかほとんど分からない。