薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
第二話 ――凄腕弁護士は、容赦がない――
「私の人生を……変えた人たちのことを、思い出しました」
そう口にした途端、さっきまで少し軽くなっていた胸の奥へ、ずっと押し込めていたものが戻ってきた。
笑っていたはずなのに、急に喉が渇く。
茂樹先生も、聖子さんも、征さんも何も言わなかった。続きを促すことも、急かすこともなく、ただ静かに待っている。
その沈黙が、不思議とありがたかった。
話してもいい。でも、無理に話さなくてもいい。
そんなふうに言われているような気がしたから。
私は膝の上で組んだ指へ視線を落とし、ゆっくりと息を吐いた。
「……良い意味では、ありません」
「うん」
茂樹先生が穏やかに頷く。
その声に背中を押されるように、私はずっと見ないふりをしてきた過去を辿り始めた。
「私、ずっと……男運が悪いんだと思ってたんです」
「男運?」
征さんが、わずかに眉を上げる。
「はい。今まで付き合った人が三人います」
たった三人と言えば、それまでだ。
でも、私には十分だったし、むしろ三人目まで懲りなかった自分を褒めてほしいくらいだった。
「見事なくらい、三人とも酷かったです」
「まあ……」
聖子さんの眉がぴくっと動いた。
今にも何か言いそうだったけれど、茂樹先生がちらりと目を向けると、ひとまず口を閉じる。
そのやり取りに少しだけ気持ちが和らいだものの、次に口にする名前を思うと、また胸の奥がざらついた。
「でも……最後の人の時に、ようやく気づいたんです」
「何に?」
茂樹先生の声が、少しだけ真剣になる。
私は一度、唇を結んだ。
できれば、もう関わりたくなかった名前。
それでも、このまま何も知らずに終わらせるのは違う。今なら、そう思える。
「三人とも……同じ女が関わっていました」
「同じ女性が?」
「はい」
そして、その名前を口にした。
「坂梨未來。私と同い年です。高校からの友達でした」
――友達だった。
過去形にした自分の言葉が、妙に耳に残る。
◇
未來と知り合ったのは、高校に入ってからだった。
明るくて人懐っこく、初対面の相手にも平気で話しかけられるような子で、どちらかといえば人と必要以上に近づくのが得意ではなかった私とは正反対だった。
そんな私のところへ、未來の方からやってきた。
一緒に昼食を食べるようになり、放課後も一緒に過ごすようになって、気がつけば家庭のことも両親のことも、他の人には話さないようなことまで少しずつ話すようになっていた。
少なくとも、その頃の私は、坂梨未來だけは信用していいと本気で思っていた。