薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
第十話 ――緊急事態は、突然に――
電車を乗り継ぎ、愛梨さんと二人で勤務先へ向かう。
いつもなら一人で乗っていた電車に、今日は愛梨さんがいる。
けれど、昨日のことや今朝決まった安全対策について、普通に声へ出して話すわけにはいかなかった。
平日の昼前とはいえ、車内にはそれなりに人がいる。どこで誰が聞いているか分からない。
結局、隣同士に座っているのに会話はLINEになった。
『神宮寺さん、大丈夫ですか?』
通知に気づいて隣を見ると、愛梨さんは何食わぬ顔で前を向いたままスマートフォンを触っている。
『大丈夫です。多分』
すぐに既読がついた。
『多分なんですね』
『だって、こんなの初めてなので』
送ると、隣で愛梨さんの口元が少し緩んだ。
私もつられて笑いそうになり、窓の方へ顔を向ける。
そこに薄く映っていたのは、昨日から何度も驚き、戸惑い、不安になった私の顔だった。
耳元には、小さなピアス。
見た目はただのアクセサリーなのに、今は私の居場所を確認するための機能が入っているらしい。
バッグの中には二台のスマートフォン。
今まで使っていた端末と、新しく普段の連絡に使う端末。
そして、その二台を見分けるもう一つの方法が、待ち受け画面だった。
新しいスマートフォンを開いた瞬間、私は危うく吹き出しそうになった。
画面いっぱいに表示されているのは、澤登法律事務所と家族の面々。
しかも、ちゃんと並んで撮った集合写真ではない。
別々に撮ったらしい写真を切り抜き、一枚の集合写真みたいに加工してある。
普通に笑っている人もいれば、妙に真面目な顔の人もいて、なぜその写真を選んだのか聞きたくなるような表情まで混ざっていた。
最初に見た時は鈴子さんを疑ったけれど、出掛ける前に聖子さんへ聞くと、
『それ、暢の遊び心よ』
と、あっさり教えられた。
朝からスマートフォンのシステムだのセキュリティだの、難しい話を当たり前のようにしていた人が、最後に何を仕込んでいるんだろう。
またLINEが届く。
『その待ち受け、見ました?』
愛梨さんだった。
『今見てます。何なんですか、これ』
『暢さんです』
『聞きました』
少し間を置いて、
『ちなみに私も、いつ撮られたのか知りません』
今度こそ危なかった。
隣を見ると、愛梨さんも肩を震わせている。
二人して電車の中で吹き出したら、それこそ目立つ。
私はスマートフォンを伏せ、もう一度窓へ目を向けた。
耳には見慣れないピアス。
バッグには二台のスマートフォン。
隣には愛梨さん。
昨日までとは、何もかも違う。
それでも、待ち受けの中で好き勝手な顔をしている人たちを思い出すと、張りつめていたものが少しだけ緩んだ。
いつもなら一人で乗っていた電車に、今日は愛梨さんがいる。
けれど、昨日のことや今朝決まった安全対策について、普通に声へ出して話すわけにはいかなかった。
平日の昼前とはいえ、車内にはそれなりに人がいる。どこで誰が聞いているか分からない。
結局、隣同士に座っているのに会話はLINEになった。
『神宮寺さん、大丈夫ですか?』
通知に気づいて隣を見ると、愛梨さんは何食わぬ顔で前を向いたままスマートフォンを触っている。
『大丈夫です。多分』
すぐに既読がついた。
『多分なんですね』
『だって、こんなの初めてなので』
送ると、隣で愛梨さんの口元が少し緩んだ。
私もつられて笑いそうになり、窓の方へ顔を向ける。
そこに薄く映っていたのは、昨日から何度も驚き、戸惑い、不安になった私の顔だった。
耳元には、小さなピアス。
見た目はただのアクセサリーなのに、今は私の居場所を確認するための機能が入っているらしい。
バッグの中には二台のスマートフォン。
今まで使っていた端末と、新しく普段の連絡に使う端末。
そして、その二台を見分けるもう一つの方法が、待ち受け画面だった。
新しいスマートフォンを開いた瞬間、私は危うく吹き出しそうになった。
画面いっぱいに表示されているのは、澤登法律事務所と家族の面々。
しかも、ちゃんと並んで撮った集合写真ではない。
別々に撮ったらしい写真を切り抜き、一枚の集合写真みたいに加工してある。
普通に笑っている人もいれば、妙に真面目な顔の人もいて、なぜその写真を選んだのか聞きたくなるような表情まで混ざっていた。
最初に見た時は鈴子さんを疑ったけれど、出掛ける前に聖子さんへ聞くと、
『それ、暢の遊び心よ』
と、あっさり教えられた。
朝からスマートフォンのシステムだのセキュリティだの、難しい話を当たり前のようにしていた人が、最後に何を仕込んでいるんだろう。
またLINEが届く。
『その待ち受け、見ました?』
愛梨さんだった。
『今見てます。何なんですか、これ』
『暢さんです』
『聞きました』
少し間を置いて、
『ちなみに私も、いつ撮られたのか知りません』
今度こそ危なかった。
隣を見ると、愛梨さんも肩を震わせている。
二人して電車の中で吹き出したら、それこそ目立つ。
私はスマートフォンを伏せ、もう一度窓へ目を向けた。
耳には見慣れないピアス。
バッグには二台のスマートフォン。
隣には愛梨さん。
昨日までとは、何もかも違う。
それでも、待ち受けの中で好き勝手な顔をしている人たちを思い出すと、張りつめていたものが少しだけ緩んだ。