薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
「ただいま戻りました」

「戻ったよ」

愛梨さんと茂樹先生が声を掛けた、その瞬間だった。

一番に反応したのは陸斗さん。

さっきまで征さんと話していたはずなのに、顔を上げたと思った次の瞬間には、もうこちらへ向かって歩いてきている。

いや。

歩くというより、かなり速い。

「神宮寺さん」

「はい?」

目の前まで来る。

「大丈夫でしたか? 勤務先で何かされてませんか。出てから変なことは?」

「何も……」

「未來さんからは、あのあと連絡は?」

「来てません」

「体調は?」

「大丈夫ですけど……」

一つ答えると、すぐ次の質問が飛んでくる。

そこで、事務所が妙に静かになっていることに気づいた。

見ると、みんなこっちを見ている。

鈴子さん。

聖子さん。

暢さん。

純さん。

愛梨さんまで。

征さんだけは、なぜか少し視線を逸らしていた。

……何?

最初に口を開いたのは純さんだった。

「……何、アレ」

聖子さんも小さく頷く。

「どうしたのかしら」

鈴子さんは隠す気もなく、じっと息子を見ている。

「やっぱり」

「何がですか」

陸斗さんが振り返る。

暢さんまでパソコンから顔を上げた。

「いや……変だよね」

「何がですか」

「それ」

「それとは?」

「今の」

「だから何ですか」

純さんが、コピーした資料を胸の前で抱えながらにやりとした。

「帰ってきた瞬間、真っ先に神宮寺さんのところへ飛んでったやつ」

「飛んでません」

「いや、ほぼ飛んでた」

「歩いただけです」

「速かったわよ」

聖子さんまで加わり、鈴子さんも楽しそうに頷く。

「何かしらねえ」

「母さん」

「はい?」

「余計なこと言わないでください」

「まだ何も言ってないわよ」

確かに、まだ何も言ってはいない。

でも顔には全部出ている。

「とにかく」

陸斗さんが強引に話を切った。

「無事なら、それでいいです。今日はもう一人で動かないでください」

「分かりました」

返事をすると、また周囲が妙に静かになった。

「……何ですか」

今度は私が聞く。

純さんが肩をすくめる。

「いや、別に」

その言い方。

絶対、面白がってる。

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