天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
事故に遭い、突然職場から姿を消した藍衣は、彼にとっていまだに喪失の象徴なのかもしれない。

「それもある。もう藍衣を見失わないように」

こちらに視線を落とし、この世のものとは思えぬ美貌で囁く。

「でもそれだけじゃなくて――」と黎士が言う。腰を屈めて顔を近づけ、藍衣の視界を塞いだ。

「つらいときくらい、慰めさせて。俺は藍衣の夫なんだから」

そう言って、形のいい唇を藍衣のそれに寄せた。

柔らかな感触からは優しさだけが伝わってきて、そこに変ないやらしさや押しつけがましさはまるでなかった。

ただ自分のことだけを考えてくれる、そう感じ取って、わずかに動揺しながらもキスを受け止める。

唇がゆっくりと離れていったあと。

「……婚約者、です」

義務のようにツッコミを入れると、彼は「一緒だろ」と笑って藍衣の体を抱きしめた。

「……だいたい、どうして黎士さんは私のことを……」

こんなにも大事にするのだろう。キスなんて……するのだろう。

「藍衣が思い出したら教えてやる」

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